2009年11月19日

ゴースト・オブ・マーズ

Ghosts of Mars
2001年/アメリカ
監督:ジョン・カーペンター
出演:アイス・キューブ ナターシャ・ヘンストリッジ ジェイソン・ステイサム クレア・デュヴァル パム・グリア ジョアンナ・キャシディ ジュアン・デイヴィス

火星人ゴーストにとり憑かれた英語の話せない連中をアメリカ先住民インディアンに見立てた、火星を舞台にしたSF風味のウエスタン。『ヴァンパイア/最期の聖戦』以降、カーペンターはようやく自分を優れたアクション演出家として自覚したようだが、本作においては数回観れば脳味噌が筋肉になること請け合いの、見事な頭からっぽ格闘アクションを展開。何度か観ないと良さはわからないかもしれないね。21世紀になってもこんな『ゴーストハンターズ』『ニューヨーク1997』のセルフリメイクのような怪作を放つカーペンター親父には尊敬の念を禁じえない。

アイス・キューブや巨乳ナターシャももちろんいいが、パム・グリア姐さんやクレア”パラサイト”デュヴァルなど、脇を固めるキャストもワクワクするような個性的な面子を集めている。牢屋に悪党4人揃って閉じ込められるシーンや、デュヴァルがあまりにも呆気なく首をスッ飛ばされる唐突さなどは、抱腹絶倒間違いなしだw

カーペンターは最近は劇場映画の演出からは遠ざかっているようだが、まだまだこういう小品をたくさん撮り続けてほしいと切に願う。

★★★★★★★☆☆☆

2009年11月17日

月蒼くして

The Moon is Blue
1953年/アメリカ
監督:オットー・プレミンジャー
出演:ウィリアム・ホールデン マギー・マクナマラ ドーン・アダムス デヴィッド・ニーヴン トム・テューリー

プレミンジャーの人物配置や編集のうまさ。ホールデンのアパート内だけでほとんど物語は進むのだが、ぜんぜん飽きさせないのはさすがだ。マクナマラやデヴィッド・ニーヴンのキャラクターもなかなか面白い。

しかし、ドーン・アダムスがただのアホ女にしか見えず、もう少しストーリーに絡ませてほしかった。まあ、そこまでやっちゃうと110分程度になってしまうだろうし、プレミンジャーにしてはコンパクトにまとまったこのくらいの尺でイイのかもしれない。

★★★★★☆☆☆☆☆

2009年11月16日

東京流れ者

1966年/日活
監督:鈴木清順
出演:渡哲也 松原智恵子 吉田毅 二谷英明 郷えい治 江角英明 川地民夫 浜川智子

清順流美学の集大成か。原色を基調とした舞台装置の美術が素晴らしく、とても見ごたえがある。あんなキチガイじみたセットを映画で使おうとすること自体がすごいw

プロットはかなり使い古されたものだし(でも、途中からワケわかんなくなりますが。ストーリーを上手く語るという意味で、この演出家ほど下手糞な人はいないだろう)、清順のある意味フェティッシュな画面造形がなければ、とっくに忘れ去られている作品だろうと思う。

本作の白眉は、渡哲也がエレベーターと部屋の間の妙な落とし穴(?)に唐突に落下するところ。あの場面は演出もカメラも演技もとてつもなくシュールだ。それと、ラストの銃撃戦。投げた銃を自分で再キャッチして敵を一撃!という、もう中国雑技団的な離れ業をやってのける。まー腹抱えて笑いましたw

★★★★★★☆☆☆☆

2009年11月15日

マルホランド・ドライブ

Mulholland Drive
2001年/アメリカ
監督:デヴィッド・リンチ
出演:ナオミ・ワッツ ローラ・エレナ・ハリング アン・ミラー ジャスティン・セロー ダン・ヘダヤ マーク・ペルグリノ ブライアン・ピーコック


有無を言わさぬ大傑作。

もう何度も何度も何度もこの作品を観ているが、俺はその度にいつも泣いてしまう。それは、ナオミ・ワッツの登場の可憐さと、後半の加速度的に崩れてゆく佇まいの対比だけでは決してない!(しかしながら、ここでのナオミ・ワッツの演技力の凄まじさといったら特筆モノなんだが!) はたまた、ローラ・ハリングの前半の脅えっぷりと後半のふてぶてしさの対比か?(いや、最初からこのハリングのスタンディングは図抜けていたではないか!シャワーを浴びているところをワッツに見られた場面の立ち姿はどうだ!)

長い映画で、ミステリーとしてもサイコ・サスペンスとしても筋立てがとてもよく出来ており(あくまでリンチの映画としては、という注釈は付くのだけどね)、殺人事件を私立探偵まがいに捜索するワッツとハリングももちろんなのだが、ブルーボックスの小道具としての筋立てや、カフェで打ち合わせする気の弱そうな男と刑事のやり取り。どうやら彼らは悪夢を見ていたらしい。しかし、カフェを出たあとの裏通りで悪夢に出たままの浮浪者と対峙し気を失う場面の凄まじい悪意の発散! そして、中盤に唐突に出現するスペイン語での歌劇。「泣き女」の”圧倒的”と呼ぶしかない存在感!

人生で何度か出会うことのできる、魂を根本から揺さぶられる映画です。やっぱりデヴィッド・リンチはすごい。あまりにも切ない切ない、恋愛映画の大傑作。この映画を観ていない人は人生を少しばかり損している、かもしれないね。そう、映画にとって何が重要かは結局、ストーリーの辻褄合わせではなく、映像と音響に他ならないのだから。

観終わったあと、あまりのショックでしばらく座席から立てなくなる映画がたまにある。私にとってはそんな作品のひとつです。凄まじい情感を発動する映画の中の映画。 絶対的映画。

★★★★★★★★★★

2009年11月14日

エル・マリアッチ

El Mariachi
1992年/メキシコ=アメリカ
監督:ロバート・ロドリゲス
出演:カルロス・ガラルドー コンスエロ・ゴメス ジョイム・デ・ホヨス ピーター・マルカルド レーノル・マルティネス

まあ確かにロバート・ロドリゲスの処女作らしい瑞々しさに溢れてはいるけども、アバンタイトルの音響効果以上の演出や映像・音響を、それ以降見ることができなかったのがとても残念だ。マリアッチ役の俳優にまったく魅力がないのもさることながら、演出が押しなべて画一的・・・、というか、もっと面白くできるだろうに!という「残念感」を観ている最中ずっと感じてしまいました。素人の俺にそんなことを思わせる時点で、この映画は果たしてどうなんだろう、と。

しかし予算7000ドルってのはすごいな。きょうび、日本のテレビドラマでも正味45分の作品で役400~500万円が消費されてるというのに。金をかけなくてもソコソコのものは出来るという意味では、興味深い映画ではあると思う。

★★★★☆☆☆☆☆☆

サランドラ

The Hills Have Eyes
1977年/アメリカ
監督:ウェス・クレイヴン
出演:スーザン・レイニア ロバート・ヒューストン マーティン・スピアー ディー・ウォーレス ラス・グリーヴ ジョン・ステッドマン

ウェス・クレイヴンによる『悪魔のいけにえ』の換骨奪胎だが、そんなに出来はよろしくない。が、全体にザラついた映像はとてもよく雰囲気が出ているし、ラストで女が毒ヘビを掴んで仲間の喉笛に噛み付かせ、男がトドメに胸や腹を何度も何度もナイフで突き刺す場面。そこで画面が真っ赤に転じエンドクレジットが重なる演出なんか、個人的にはまあ悪くはないんでは?と思う。聞くところによれば、公開当時はえらく評判悪かったみたいなんで。

邦題のサランドラってどういう意味かねこれ。原題を直訳すれば「丘に目あり」みたいなニュアンスだろうが、サランドラ??

★★★★☆☆☆☆☆☆

2009年11月7日

夜の流れ

1960年/東宝
監督:成瀬巳喜男 川島雄三
出演:司葉子 山田五十鈴 宝田明 三橋達也 白川由美 水谷良重 草笛光子 越路吹雪 志村喬

成瀬と川島の監督としての力量が如何なく発揮されている佳作だが、やはり共同監督のせいか、それぞれのエピソード同士のまとまりに欠け、全体として散漫な印象を与える。ミもフタもないことを言ってしまえば、失敗作かもしれない。冒頭のプールのシーンからして、「ちょっと違うなぁ」という感じがしてしまう。

しかし、山田五十鈴が三橋達也に台所で無理心中を謀る場面、宝田明が尻手駅で新しい花嫁の白川由美を電車飛び込みで失う場面など、衝撃的かつ魅力的な細部に満ち溢れている。五十鈴が46歳という設定で、すっぴんの顔まで晒すわけだが(撮影当時43歳)、三橋に迫る場面の迫力は凄まじい。

成瀬巳喜男、そして川島雄三。二人とも日本を代表する演出家だ。それぞれが単独で監督した映画をやはりたくさん観たい!

★★★★★★☆☆☆☆

裏窓

Rear Window
1954年/アメリカ
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:ジェームズ・スチュワート グレース・ケリー レイモンド・バー セルマ・リッター ウェンデル・コーリイ

閉じた空間で映画は展開されるが、そこはヒッチコック、素晴らしいテクニックと語り口、見せ方で、2時間まったく飽きさせないのはさすが。物語の核心に入るまでの前半、自分にはスチュワートとケリー、リッターそれぞれとの会話が冗長に思え、そこをもう少しスピーディにして全体で100分程度に纏めてほしかったところではある。まあ面白いことに違いはないけども。

しかしこれを観ると、『めまい』はやっぱりグレース・ケリーで撮ってほしかったなあ。

★★★★★★★☆☆☆

2009年11月6日

悪魔の赤ちゃん

It's Alive!
1973年/アメリカ
監督:ラリー・コーエン
出演:ジョン・P・ライアン シャロン・ファレル ジェームズ・ディクソン ウィリアム・ウェルマン・Jr シェイマス・ロック アンドリュー・ダガン

驚くべき緊張感のない映像! どうやってここまで詰まらなくできるのか? 変なズーミングや意味なくピントを外したカメラの使い方も苦学生みたいでイヤだが、まぁこの弛緩したシーンの連続は主に監督の責任でしょうな。音楽や効果音でなんとか盛り上げようという苦心は見えるが、焼け石に水。バーナード・ハーマンのメロウな音楽が泣いてるぞ。

しかし、ラストシーンで父親が自分の赤ちゃんを製薬会社の悪い奴に投げつける場面には衝撃(笑撃)を受けた! あの涙はなんだったんだ(笑) この場面だけで星2つプラスしますw

★★★★☆☆☆☆☆☆

2009年11月3日

ブロークン・フラワーズ

Broken Flowers
2005年/アメリカ
監督:ジム・ジャームッシュ
出演:ビル・マーレイ ジェフリー・ライト シャロン・ストーン フランセス・コンロイ ジェシカ・ラング ティルダ・スウィントン ジュリー・デルピー

まずまず、かなあ。ビル・マーレイのゆる~い感じがとても良かったが。ジャームッシュはどうも肌に合わない。才覚溢れる演出家であることは承知してるんだけど・・・。もちろん『ダウン・バイ・ロー』や『ストレンジャー・ザン・パラダイス』といった昔の作品はとても素晴らしい。ただ、最近のジャームッシュはどうもなあ・・・。狙いすぎ?という感じが。

冒頭の、ジャン・ユスターシュへの献辞はなぜ? ユスターシュの映画に似てるとも思えないけど。

★★★★★☆☆☆☆☆

東京暮色

1957年/松竹
監督:小津安二郎
出演:原節子 有馬稲子 笠智衆 山田五十鈴 杉村春子 高橋貞二 田浦正巳 山村聰 信欣三 藤原釜足

暗い。とても暗い小津作品。自宅に有馬稲子が静かに帰宅する場面などは、まるで60年代イギリスの恐怖映画のような演出。

かなり(小津としては)ドラマティックな構成を、小津らしい淡々としたリアリズムで演出しようと試みるあまり、140分という、当時の日本映画としてもかなりの長尺になってしまい、結果的にはやはりこの長さがこの映画の致命傷と思う。(でも、これでもかなり省略した部分があるのではないかな?)

有馬稲子に尽きる。陰鬱だが、やはりキレイな女優さんだ。山田五十鈴もさすがの存在感。ラスト、青森行きの列車で窓を開けて覗き込み、ウイスキーをぐいと呷る場面。うまいです。

★★★★★★☆☆☆☆

2009年11月1日

トレインスポッティング

Trainspotting
1996年/イギリス
監督:ダニー・ボイル
出演:ユアン・マクレガー ユエン・ブルムナー ジョニー・リー・ミラー ロバート・カーライル ケリー・マクドナルド

ダメ人間のダメな生活を、ドラッグ、酒、セックス、暴力を織り交ぜて描いているが、とてもとても退屈な映画だ。ドラッグ絡みの映画はたくさんあるが、なぜか自分にはほとんど訴求しない。ソダーバーグの『トラフィック』とかもひどく退屈だった。

同じイギリス映画サブカルの先駆けである『時計じかけのオレンジ』の影響が明らかだが、偉大なる本家には遠く遠く及ばない駄作。天井を這う赤ん坊だって、傑作『エクソシスト3』の出来の悪いパクリにすぎないわけで。

正直言うと、冒頭、マクレガーが汚いトイレの便器に腕を突っ込む場面で、ぜんぜんノレなくなってしまったのも事実。カーライルがビールジョッキを投げつけて女性が血まみれになったりも、どうも下品だ。場面自体が下品なのではなく、演出や映像が下品だ。こういうのを「スタイリッシュ」な映画と言うらしい。「スタイリッシュ」ってなんなんだろ。

★★☆☆☆☆☆☆☆☆