2009年12月12日

ガス人間第1号

1960年/東宝
監督:本多猪四郎
出演:三橋達也 八千草薫 土屋嘉男 左卜全 佐多契子 野村浩三

こっちの映画はもう、ガス人間の変身シーンが出来がどうとか、土屋嘉男が惚れた女のために犯罪を犯しまくることに全く共感できないだとか、佐多契子があまりにも大根だとか、そんなことは全てどうでもよくなるくらい八千草薫がメチャメチャきれいです。八千草が出るシーンだけ画面の空気感がぜんぜん違うんだよなー。

しかし当時の東宝の美術は凄い。ラストで八千草が日舞を披露する演芸場はロケだろうけども、銀行の金庫とか、中盤で出てくる科学実験室のくだりとか、いやまぁなんとも贅沢な作りです。

★★★★★☆☆☆☆☆

美女と液体人間

1958年/東宝
監督:本多猪四郎
出演:白川由美 佐原健二 平田昭彦 土屋嘉男 千田是也 田島義文

『マタンゴ』などに連なる東宝特撮路線の1本。『マタンゴ』のほうが世間的には評価が高いようではあるが、個人的にはこっちが好み。

まあ、白川由美のいかがわしい色気なんかもポイント高いんだけど、やっぱりあの液体人間の動きに尽きる。安部公房の傑作短編「洪水」にインスパイアされたかのような設定なのだが、液体力学の法則を全く無視して壁を這い上がり、触れた人間もまた液状化してしまうという、液体人間のこわさを上手く演出してると思う。液体化する人間は「だんだん」溶けていくのだが、この「だんだん」ってのがミソで、この肉体の変容仮定をじっくり陰惨に見せることで、特撮SFがたちまちホラー映画と変貌するのだ。

あのヤクザがなんでわざわざ白川由美を下水道構に連れて行ったのか?など、シナリオ上の不備は散見されるものの、まあ大した問題ではないでしょう。

★★★★★★★☆☆☆

2009年12月10日

マディソン群の橋

The Bridges of Madison County
1995年/アメリカ
監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド メリル・ストリープ アニー・コーリィ ヴィクター・スレザック ジム・ヘイニー ミシェル・ベネス

とても丁寧に作りこまれた、ウェルメイドな大人の映画。初めて観たのだが、若い頃に観ていても今ひとつピンと来なかったかもしれない。

どしゃぶりの雨の中でずぶ濡れになりながら立って、車中のフランチェスカを見つめるロバート。そして、信号待ちの僅かな時間の中、ペンダントをバックミラーに掛けてフランチェスカの決断を迫る場面。この繊細でセンシティブな演出には心底感服すると同時に、とても感動した。そして、イーストウッドの映画における画面と音の透明さは、この頃から静かに現出している。

★★★★★★★☆☆☆

2009年12月9日

舞台恐怖症

Stage Fright
1950年/イギリス
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:ジェーン・ワイマン マレーネ・ディートリッヒ リチャード・トッド アラステア・シム ケイ・ウォルシュ パトリシア・ヒッチコック

日本劇場未公開の、ヒッチコックがイギリスに戻って撮った作品。冒頭の車で逃げる場面と、フラッシュバックとの整合性が無いなど、シナリオや演出の不備が見受けられ、そんなにデキはよろしくない。ワイマンの父親の行動もあまりに突飛すぎて白ける。その父親、「自分は変人だから」と台詞で告白してはいるのだが、ヒッチほどの演出家なのだからそれが免罪符にはならないだろう。

しかし、クライマックスのサスペンス演出でグイグイ押しまくるあたりはさすがだ。イギリス映画だし、監督がヒッチコックじゃなかったらとうの昔に忘れ去られていた映画だろう。大物舞台女優を演じるディートリッヒの迫力!

★★★★★☆☆☆☆☆

2009年12月8日

エル・ドラド

El Dorado
1966年/アメリカ
監督:ハワード・ホークス
出演:ジョン・ウェイン ロバート・ミッチャム ジェームズ・カーン アーサー・ハニカット シャーリーン・ホルト エドワード・アズナー R・G・アームストロング

もうこうなると完全に予定調和の世界で、まぁホークス監督の西部劇でウェインとミッチャムがメインでクレジットされるキャスティングなのだから、面白くないはずがない。突き抜けるモノがないのは仕方ないかもしれんが、ミッチャムのキャラクターの立ちっぷりだけでも充分に楽しめる。

以前も書いたかもしれんが、西部劇というジャンル自体、実はあまり好きではない。ただ、イーストウッドの『ペイルライダー』と『許されざる者』、フライシャーの『スパイクス・ギャング』だけは別格だけどね。

★★★★★★☆☆☆☆

2009年12月7日

残酷の沼

Torture Garden
1967年/イギリス
監督:フレディ・フランシス
出演:バージェス・メレディス ジャック・パランス ピーター・カッシング マイケル・ブライアン ビヴァリー・アダムス ロバート・ハットン バーバラ・イウィング

おどろおどろしい怪奇映画という感じではないが、オムニバス形式でそれぞれのお話がうまく捻ってあり、なかなか面白い。特に、意志を持ったピアノが嫉妬心にかられ女性に襲い掛かる3話目と、エドガー・アラン・ポーが現代に甦る4話目が秀逸。これは演出よりも脚本・原作のロバート・ブロックの力に依るところも大きいかもしれない。が、女の蝋人形がそれぞれのお話に効果的に絡んでるあたりはうまい演出だと思う。2話目に出てきたレストランのスノードームに人間が入ってたりとか、細かい舞台設定もGOOD。

しかし何と言っても本作はキャスティングでしょう。狂言回しのバージェス・メレディスに、ポー収集家の面白おかしい掛け合いを演ずるのはジャック・パランスとピーター・カッシング。当時のイギリス映画の個性派名優勢ぞろい!という感じで、見ててとても楽しい。

★★★★★★★☆☆☆

Dolls ドールズ

2002年/松竹=オフィス北野 他
監督:北野武
出演:菅野美穂 西島秀俊 三橋達也 松原智恵子 深田恭子 武重勉 大杉漣 岸本加世子 津田寛治 大家由祐子

北野武版『女と男のいる舗道』。

透明な演出と透明な演技、そして透明な画面。いずれ北野武がこのような地平へ到達することはずっと以前から明白だったと思うのだが、それにしてもとても透明度の高い演出だ。冒頭で菅野と西島が不気味なほど美しい桜並木を歩く場面で、本作が傑作であることを疑うことはなかった。

狂おしくも哀しい、悲哀映画の大傑作。菅野美穂の演技は奇跡的と言うしかない。この儚い佇まいと演技に、泣けて泣けて仕方がなかった。

小川に浮かぶ紅葉、菅野と西島を結ぶ太く赤い糸・・・、小道具もとても印象的、かつ嫌味がない。こうなるともう様式美の世界だ。北野武は自分がやっていることに(ほぼ)100%の自信を持っていると思う

★★★★★★★★☆

2009年12月6日

ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク

The Lost World: Jurassic Park
1997年/アメリカ
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:ジェフ・ゴールドブラム ジュリアン・ムーア リチャード・アッテンボロー ピート・ポスルスウェイト ヴィンス・ヴォーン アーリス・ハワード ピーター・ストーメア

つまらないね。ここにはサスペンスすらも皆無だ。恐竜の造形がどうのは既に前作でやり尽くしてしまっているわけだし、さすがに観客を舐めすぎでしょう。

ひいきの女優さんジュリアン・ムーアの登場。いい女ですねホントに。

★★★★☆☆☆☆☆☆

2009年12月5日

ガルシアの首

Bring Me The Head of Alfredo Garcia
1974年/アメリカ
監督:サム・ペキンパー
出演:ウォーレン・オーツ イゼラ・ヴェガ ギグ・ヤング ロバート・ウェッバー エミリオ・フェルナンデス クリス・クリストファーソン ヘルムート・ダンディーネ

恋人同士で弁当持ってピクニックに行く場面が前半にあり、寄り添いながら将来の結婚の夢なんぞ語ったりするもんだから「ペキンパーにしては腑抜けてるなあ・・・」と思ってたが、いやいや、ヒーローがウォーレン・オーツでヒロインがイゼラ・ヴェガなのだから、ペキンパーはハナっから美男美女が活躍するハードボイルドには興味がない。オーツが演じるのはしがないバーのピアノ弾きで、ヴェガは娼婦みたいなもの。男くさい、男の映画がここでも展開される。その証拠に、ヴェガ演じるエリータは映画の中盤、墓暴きの最中に(どういうわけか知らぬが)唐突に死んでしまう。

その、エリータが死んでからのオーツのテンションの上がり具合と壊れ具合が、この映画の白眉だろう。ハエがたかるガルシアの首を助手席に乗せ、その首に話しかけながら破滅へまっしぐらのオーツ。メキシコ大地主の屋敷の中で銃を乱射し、逃げる途中で車がハチの巣にされるクライマックス。その後にひんやり訪れる心地よいカタルシスがエンドクレジットに被さる。ジョン・ウーなんぞには100年かかっても追いつけない、ペキンパーの旋律と美学!

ペキンパー諸作の中でもひときわ陰惨な色合いを放つ、ハードボイルドの傑作だ。うーん、やっぱり70年代のアメリカ映画は面白い!

★★★★★★★★☆☆

2009年12月4日

乱れる

1964年/東宝
監督:成瀬巳喜男
出演:高峰秀子 加山雄三 草笛光子 白川由美 三益愛子 浜美枝

心底、魂の震える大傑作だ。

もう10年近く前になるが、名画座でこの映画を観た帰り道、「すげえ、もう最高だ。最高だ」と、何度も何度も呟きながら歩いていたのを覚えている。だがそれ以外、どの電車に乗ってどの道をどうやって帰ったのかすら覚えていない(笑) そのくらい衝撃だった。それまで自分が観ていた日本映画は何だったのか?

観客の心情を根底から揺さぶる演出と演技。中でも、高峰秀子と加山雄三のアイコンタクトの演技がそれだ。特に高峰は本当に成瀬の演出との相性が抜群だが、見送り電車の中での2人の接近の演出! とにかく、高峰が家を飛び出して以降の「よろめき」ドラマの部分の圧倒的で押し寄せるような演出と演技!

そして、ラストカットでの前髪を額に振り乱した高峰のクローズアップ。もう最高だ。ずっとずっとずっと、観ていたい映画。

★★★★★★★★★★

2009年12月3日

ビデオドローム

Videodrome
1982年/カナダ
監督:デヴィッド・クローネンバーグ
出演:ジェームズ・ウッズ デボラ・ハリー ソーニャ・スミッツ レイ・カールソン ピーター・ドゥヴォルスキー

久々に観たクローネンバーグのヌメヌメ感満載のノンジャンル映画。まあこの映画も一度観てますが、かなり久々に触れてみると、やっぱりジェームズ・ウッズの腕がワルサー拳銃と融合したり、腹にマンコみたいな亀裂が出来てビデオテープを挿入したり、内臓のヌメリとした描写だけよく覚えてますな。もちろんデボラ・ハリーの妖しげな色気もかなりこの映画独特の雰囲気にマッチしてますが。

でも、なんといってもジェームズ・ウッズです。喘ぎ声をあげるテレビをムチで打ったり、拳銃と同化した右手を庇いながら街中をコソコソと逃げ回ったり、挙句の果てには誰に頼まれたわけでもないのにおかしなメガネをかけたり。ソレらを全て真剣そのものの表情でやってるもんだから、爆笑できること請け合い。

メガネの展示会。オッサンがウッズに拳銃で撃たれて内臓や脂肪が顔や胸からブリブリと出てきて悲惨な死を遂げる場面が、(あらゆる意味で)映画のクライマックスだろう。この死に様は本当に悲惨極まりない(笑) この特殊メイクアップもリック・ベイカーか! お前はなんぼほど稼ぐねん!

★★★★★★★☆☆☆

2009年12月2日

ファンハウス/惨劇の館

The Funhouse
1981年/アメリカ
監督:トビー・フーパー
出演:エリザベス・ベリッジ クッパー・ハッカビー マイルズ・チャピン ラルゴ・ウッドラフ ショーン・カーソン ケヴィン・コンウェイ

トビー・フーパーが放つ怪奇映画の傑作。カーニバルの退廃的でおどろおどろしい雰囲気を基本ベースに、オーソドックスな怪人モノを堂々たる正統派演出で仕上げたフーパーの手腕が如何なく発揮されている。『悪魔のいけにえ』的な異端の道から、続く『悪魔の沼』、そして本作。やはり彼は怪奇映画、恐怖映画の基本をしっかり押さえた上での『悪魔のいけにえ』だったのだ。

前半で双頭の牛、口蓋裂の牛など、本物のフリークアニマルが登場し、陰惨な雰囲気を醸し出すことに成功(ケヴィン・コンウェイのダミ声の呼び口上がいい味を出している)。ファンハウス内のブリキの人形や小道具、「神は見ている」と呼びかける老婆など、細かいところでの演出がとても上手だ。

顔全体が昆虫のような畸形息子の特殊メイクはリック・ベイカーか。口がうまく閉じられないもんだからずっとヨダレを垂らしている。そういう細かいところもイイね。

★★★★★★★★☆☆