2009年12月23日

ダークシティ

Dark City
1998年/アメリカ
監督:アレックス・プロヤス
出演:ルーファス・シーウェル キーファー・サザーランド ジェニファー・コネリー ウィリアム・ハート リチャード・オブライエン イアン・リチャードソン

藤子不二雄の傑作マンガ「笑ゥせぇるすまん」のハリウッド版実写化映画(すみませんウソです)。

うーん、つまらない。邪悪さが足りないのだ。ストレンジャーの描き方にしてもそうだが、街全体の雰囲気なんかもまだまだ邪悪にしなきゃならんと思う。もっともっと面白くできる舞台は整ってるのに、「もっと努力しろ」と言いたくなってしまう。

カット割りがとても忙しい。最近は古い日本映画ばかり観ていたので、少々疲れるなー。ま、これは最近のこのテの映画にはありがちな処置なので、そこに文句言っても仕方ないんだけどね。

この頃のジェニファー・コネリーはやっぱりカワイイね。

★★★★☆☆☆☆☆☆

2009年12月22日

人情紙風船

1937年/東宝
監督:山中貞雄
出演:中村翫右衛門 河原崎長十郎 山岸しづ江 霧立のぼる 瀬川菊之丞 橘小三郎 市川笑太郎 市川莚司

オープニングからラストカットまで、全編の隅から隅まで「死」の臭いが纏わりついた山中貞雄の遺作。もちろん、おたきを演じる山岸しづ江の不気味なまでの悲愴感がそれに拍車をかけていることは間違いないだろうが、それにしても何と厳格で聡明な演出だろう。役者の情感をフィルムに定着させる術においても神業だ。最後の10分間は涙が出そうになった。ラストで側溝にゆっくりと落ちて揺らぐ小さな紙風船・・・!

思えば、これほど天才の遺作に相応しいペシミスティックな情感に満ち溢れた映画もないだろうと思う。この傑作を最後に山中貞雄は中国へ出征し、戦死を遂げてしまった。名誉の戦死なんかではない。世界に誇る逸材を失った戦争の代償は計り知れない。

最近のCGばかりのハリウッド映画や、TVドラマに毛が生えた「映画」とも呼べないようなシロモノに食傷気味になっている貴方、ぜひこの『人情紙風船』を観てみなさい。間違いなく当時の日本映画はアメリカ映画、ドイツ映画と並んで世界最高峰のクオリティと完成度を発揮していた。本作を観ればそれを充分に理解できるだろう。また、山中貞雄という人がいかに偉大であったかも瞬時に実感できるはずだ。

★★★★★★★★★☆

2009年12月20日

私は告白する

I Confess
1953年/アメリカ
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:モンゴメリー・クリフト アン・バクスター カール・マルデン O・E・ハッセ ドリー・ハス ブライアン・エイハーン チャールズ・アンドレ

無罪判決が出たあと、神父が退廷し階段をゆっくり降りて裁判所の正面玄関から出て、車に乗り込もうとするも群集に飲まれる。そして、真犯人の妻が神父の元に駆け寄り、その真犯人の夫に撃ち殺されてしまうまでの一連のシークエンスが圧倒的だ。その前の裁判のシーンがどうもグダグダしてて眠くなったのだが、あれで一気に目が醒めた。

タイトルバックのかっこよさや、クライマックスで真犯人をクローズアップせずに終始「引き」の画で演出するなど、ヒッチコックのセンスが充分に堪能できる逸品だ。

★★★★★★★☆☆☆

幕末太陽傳

1957年/日活
監督:川島雄三
出演:フランキー堺 左幸子 南田洋子 石原裕次郎 芦川いずみ 市村俊幸 金子信雄 山岡久乃

面白い。とても面白いが、世間で言われるほどの傑作ではないと思う。

川島のアクターズディレクションの巧みさはここでも素晴らしいし、フランキー堺のコミカルなセリフ回しと動きなんて見てて惚れ惚れするのだが、今ひとつ全体に散漫な印象を与えるのは、カットごとの余韻がちょっと短すぎるからかもしれない。おそらく長尺になるのを恐れての処置だったのだろうが、130分近くになってもいいから、もう少しワンカットワンカット毎のイメージの残響が欲しかった気もする。

★★★★★★★☆☆☆

2009年12月19日

ダーク・ハーフ

The Dark Half
1993年/アメリカ
監督:ジョージ・A・ロメロ
出演:ティモシー・ハットン エイミー・マディガン マイケル・ルーカー ジュリー・ハリス ロバート・ジョイ ケント・ブロードハースト

う~ん・・・さっぱりワケがわからないが、これではまるでヒッチコック『鳥』の出来の悪いリメイクではないか。ジョージがスズメの大群に血肉どころか骨まで食べ尽くされるゴアシーンはなかなか悲惨でよろしいが・・・。まぁ、日本劇場未公開なのも致し方ないと言えますな。

人が画面にバッと出てきて、それと同時にジャーン!と音楽を鳴らせば、驚くのは当たり前なのであってね。ロメロ君、そういうのはお化け屋敷と何ら変わりはなく、映画における「演出」とは呼ばんのだよ。手を抜いちゃダメです。

★★★★☆☆☆☆☆☆

2009年12月18日

旅役者

1940年/東宝
監督:成瀬巳喜男
出演:藤原鶏太 柳谷寛 高勢実乗 清川荘司 御橋公 深見泰三 中村是好

戦前の成瀬「芸道もの」の1本だが、これは出来が良くない。ラストシーンの本物の馬と着ぐるみ馬との追いかけっこなんて、愚にも付かない。成瀬がこれじゃダメだと思う。締まりがないんだもの。

脚色自体も成瀬がやってるってことがダメなのかね。シナリオとかは他人に任せて演出に専念したほうがいい映画を撮る人なのかもしれない。

★★★☆☆☆☆☆☆☆

2009年12月17日

河内山宗俊

1936年/日活
監督:山中貞雄
出演:河原崎長十郎 中村翫右衛門 市川扇升 原節子 山岸しづ江 市川莚司 助高屋助蔵 坂東調右衛門

映画は複合芸術と言われるが、まったく映画ほど、驚くほど通俗的な賛辞の似合うメディアもそうは無いと思う。例えば「ガンアクションがカッコよかった」とか「ヒロインの女優さんが活き活きしていた」とか「音楽のタイミングが絶妙だった」など、他の芸術や文化(例えば絵画や詩、文学など)を前にしては恥ずかしくて口に出来ないような賞辞が次々と繰り出される。

本作はフィルムの状態がとても悪く、セリフが半分以上聞き取れない。字幕スーパーが欲しいくらいだ(BS2で見たが、DVDでは字幕が付いているらしい・・・。今度はDVDを借りてこよう)。それでもこれだけ面白いんだから大したモノだが、やはり先般の『丹下左膳餘話 百萬兩の壺』と比べると数段落ちる。まあ『丹下・・・』が空前絶後の大傑作だから仕方ないけどw それでも、河原崎長十郎の小粋な感じや若かりし頃の原節子の可愛さを、正にその通俗的な賛辞で支えることができる。そう、けっきょくは映画を見る楽しみの本質なんて、暗がりで俳優の顔を見つめることに他ならないのだから、そもそもが露骨で際どい性質のモノなのだ。

クライマックス、掘でのモブシーンにおける手前と奥行き、上下左右の空間の切り取り方には、山中貞雄の卓越したセンスを感じる。まったく映画的と言うしかない。まあ、なんというか、天才なんですねやっぱり。

★★★★★★★☆☆☆

2009年12月15日

丹下左膳餘話 百萬兩の壺

1935年/日活京都
監督:山中貞雄
出演:大河内傳次郎 喜代三 沢村国太郎 山本礼三郎 花井蘭子

先月11月にBS2で3日連続で放映した、山中貞雄の現存するフィルム3本。その撮りためておいたものを満を持して観賞。そのうちの1本である。

俺はこれが初めての山中貞雄作品なのだが、完璧だ。完璧すぎる! 先日観た成瀬の『乱れる』同様、この映画がずっと終わらなければいい、そう思いながら観る作品だ。「これで92分はあまりにも短すぎる」という心境になることの贅沢さ! 70年以上前、戦前の日本映画がこれだけの完成度を誇っていたのだ! 同時期のハリウッド映画、そう例えばエルンスト・ルビッチのスクリューボール・コメディのような佇まい。

人物とカメラとの位置の適切さと完璧さ。そして、深淵たる人物造形。これは主役である丹下左膳の、だけではない。主要登場人物すべてのキャラ付けが素晴らしいのだ! 幾度と繰り返されるセリフのお洒落さと、壷はもちろん招き猫や達磨、小判などの小道具の使い方が絶妙すぎる。

良い場面ばかり・・・というか悪い場面などひとつも無い映画だが、一番好きなのは道場破りのくだりだ。役者の演技とか脚本とか照明とかカメラとか演出とか、そういうものを全て超越した、映画の神が降りてきたような奇跡のシークエンスと言ったら言い過ぎだろうか? いや、それだけこの一連のシーンには驚愕したのだから仕方ない。また、子供が寺子屋で習った字を使って左膳とお藤に別れの手紙を書くあたりなんて、泣かせるじゃないか。言うまでもなくここでは、物語に泣くのではなく演出の巧みさに泣くのである。

自分の生涯ベスト50に入るのはもちろん、ベスト10にすら影響を及ぼすであろう大傑作。今までこの映画を見ていなかった自分に恥じ入るばかりである。

さて、次は『河内山宗俊』を見よう!

★★★★★★★★★★

悪魔の追跡

Race with the Devil
1975年/アメリカ
監督:ジャック・スターレット
出演:ピーター・フォンダ ウォーレン・オーツ R・G・アームストロング ララ・パーカー ロレッタ・スウィット

こういう映画を観ると、本当にアメリカ映画の芸と底力を感じる。

悪魔崇拝連中の主人公たちへ嫌がらせとして、犬を殺して吊るし、バカでかい毒蛇を2匹キャンピングカーに放し、挙句の果てには前後左右から車をぶつけまくるカーチェイス。嫌がらせの方法としてもうワンパンチあれば9点あげてもいいくらいのデキ。特にカーチェイス場面の迫力、適確なカット割りの技術には唸ってしまう。ガソリンスタンドの電話の前で果物ナイフでリンゴを剥いている老婆がいるのだが、フォンダの繋がらない電話の最中にその老婆を画面の中に30秒ほど登場させず、見えない中で「老婆がナイフで襲い掛かるのではないか?」と観客に思わせる場面とかね。こういう細かい演出がイイと思う。

ピーター・フォンダにウォーレン・オーツという、70年代を代表するアウトロー俳優が主役だなんて、アメリカ映画ファンとしては嬉しくなってしまうね。中盤でキャンピングカーに半ばむりやり押し入る異様な夫婦(旦那の髪型がヘンだw)、ガソリンスタンドの店員など、不安を煽るキャタクタリゼーションも上手いなぁ。

★★★★★★★★☆☆

2009年12月14日

モデル連続殺人!

Sei Donne Per L'assassino
1963年/イタリア
監督:マリオ・バーヴァ
出演:エヴァ・バートック キャメロン・ミッチェル トマス・レイネル クロード・ダンテス ダンテ・ディ・パオロ リー・クルーガー

赤と青の原色を効果的に使ったコントラストのきつい映像、そして、時代考証を超越した舞台設定はバーヴァ組の美術の真骨頂と言える。しかし、この映画は正直言って面白くない。モデルの殺し方をバラエティ溢れる形で見せてはいるものの、カット割りのクドさや画面全体の「暗さ」が俺好みじゃないのだ。アルジェントの同じジャーロ系作品の方がいろんな意味で完成度に優れていると思う。

★★★★☆☆☆☆☆☆

2009年12月13日

女の歴史

1963年/東宝
監督:成瀬巳喜男
出演:高峰秀子 宝田明 仲代達也 山崎努 賀原夏子 淡路恵子 草笛光子 加東大介 藤原釜足

物語の優先性が本作では明らかになる。演出の不備とか脚本の綻びはあまり問題にはならないのだろうな。高峰秀子。そう、大した女優だ。こんな大作で実に大らかに「女の一生」を演じる。ストーリーの見事なリズムにただ、身を委ねていればいいのだ。義父が死ぬ。夫が死ぬ。そして息子が死ぬ。そうなのだ。この死のリズムだ。この死の120分超のリズムが日本映画には大事なのだと思う。

★★★★★★★☆☆☆

2009年12月12日

戦争のはらわた

Cross of Iron
1975年/西ドイツ=イギリス
監督:サム・ペキンパー
出演:ジェームズ・コバーン マクシミリアン・シェル ジェームズ・メイソン センタ・バーガー デヴィッド・ワーナー

コバーンの部下がソビエト女兵に強制的にフェラチオさせ、チンポを噛み切られるシーン。これは男の普遍的な悪夢を具現化した場面であり、強烈に印象に残る。その後、他の女兵に集団リンチさせ嬲り殺しの目に遭うわけだが、ああなっちゃ死んだほうがマシな気もするな(汗)

無能で人間的にも最低な上官をマクシミリアン・シェルがねっとりと演じる。ラストでコバーンが彼をむりやり最前線に引っ張り出すも、銃弾の装填方法がわからずにオロオロ。それを見て大声で嘲笑するコバーンの笑い声にエンドクレジットが重なる。シェルがコバーンに殺されるラストを予想していたが、これは意外だったし、鮮明に脳裏に焼きつく。

コバーンのヒロイズムとダンディズム・・・つまりカッコよさが出色。ひとつひとつのカットがとても丹念に作られている。戦争映画の傑作と言っていいと思う。ただ、ペキンパー印のスローモーション演出がこの頃になると既に通過儀礼っぽくなっている印象があり、敵味方問わず兵士が打たれ死ぬカットでのスローモーションがやや鼻に付く。面白い映画であることに変わりはないけど。

★★★★★★★★☆☆