2009年10月31日

ターミナル

The Terminal
2004年/アメリカ
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:トム・ハンクス キャサリン=ゼタ・ジョーンズ スタンリー・トゥッチ シャイ・マクブライド ディエゴ・ルナ クマール・バラーナ

飛行機の運航状況を示すボードをオープニングクレジットに被せ、エンドクレジットは関係者のサインで締めるという、「ああ、いいセンスだなぁ」と思わせる演出。やっぱりスピルバーグは巧い。

つい最近、ポーランドの作家カリンティ・フィレンツの「エペペ」という小説を読んだばかりで、『ターミナル』を見て前半、ちょっとその小説を思い出した。言葉の通じない異国での疎外感と孤独感。トム・ハンクス演じるロシア人が英語をマスターするスピードがあまりにも早すぎね?と思うところはあるのだけども、まぁそこをきっちりスルーして映画的真実として観客に納得させてしまうところは、さすがはスピと言っておきましょう。

何より、殆どJFK空港だけで展開される135分。ここまでテンションをキープさせることができる演出家を、俺は今のアメリカ映画では他に知らない。あえて言えばロン・ハワードくらいか? ジャック・タチのフランス映画、あるいは、ハリウッド全盛期のルビッチやキャプラを思わせる余裕たっぷりの空気感と時間感覚。しかし、滑る床の60年代風のお笑い演出は要らないかな。

トム・ハンクス以外のキャラクタリゼーションがヘタクソだとか、ステイシー・トゥッチはもっと悪く悪く描いて欲しかったとか、まあいろいろ不満はあるんだけど、ラスト30分は柄にもなく泣かされてしまった。とてもいい映画だと思います。お話がよく出来すぎている? 映画なんだからそれでいいじゃないか!

★★★★★★★★☆☆

2009年10月28日

はたらく一家

1939年/東宝
監督:成瀬巳喜男
出演:徳川夢声 本間教子 生方明 伊東薫 南清吉 平田武 阪東精一郎 若葉喜世子

戦前に作られた反戦映画。政治的プロパガンダが前面に出てきており、成瀬の演出が入り込む余地がない。

フィルモグラフィーでは傑作『鶴八鶴次郎』の次作がこれ。戦前の成瀬作品は出来不出来が激しいな。

★★★☆☆☆☆☆☆☆

2009年10月25日

野望の系列

Advise and Consent
1961年/アメリカ
監督:オットー・プレミンジャー
出演:ヘンリー・フォンダ チャールズ・ロートン ウォルター・ピジョン ピーター・ローフォード バージェス・メレディス ジーン・ティアニー ドン・マレー

前半と後半で主役が代わる画期的な映画なのだが、その後半の主役も喉を掻き切って自殺し、終盤は主役不在の状態にw ラストシーン含めちょっと演出が散漫で、決してデキのいい映画ではないと思う。

それにしても当時のハリウッドベテラン俳優を豪華に配している。特に、チャールズ・ロートンの佇まいが素晴らしい。が、ヘンリー・フォンダの出番が思いのほか少なかったのが残念だ。赤狩りやホモセクシュアルを絡ませての描き方など、プレミンジャーの才覚が窺えてなかなか面白い。

★★★★★☆☆☆☆☆

2009年10月24日

晩春

1949年/松竹
監督:小津安二郎
出演:笠智衆 原節子 杉村春子 月丘夢路 青木放屁 宇佐美淳 三宅邦子 三島雅夫 坪内美子 桂木洋子

父・笠智衆と娘・原節子の親子の愛情は倒錯したエロティシズムすら感じさせるが、父娘の京都の宿でのやり取りがすんでのところで近親相姦的なイメージを想起させずに済むのは、笠のキャラクターのおかげだろう。原の演技はかなりこの映画では際どい。

杉村春子の存在感がこの映画では際立っている。中でも、「熊太郎」をめぐる笠との掛け合いや、がまぐちを拾って喜び神社の階段を駆け上がる場面、そして、グローブを持った子供とのやりとり。この幸福感と可笑しさがもう最高だ。

冒頭の北鎌倉駅から、鎌倉の街並み。笠の鎮座する窓際の机と座布団。月丘夢路が笠のおでこにキスをする小料理屋。原がたゆまぬ視線の演技を見せる能の場面。などなど、印象的な細部を挙げていけばキリがないほど。

ハリウッド全盛期のような格調と風格を持った、小津中期の堂々たる傑作。

★★★★★★★★☆☆

2009年10月23日

聖女ジャンヌ・ダーク

Saint Joan
1957年/アメリカ=イギリス
監督:オットー・プレミンジャー
出演:ジーン・セバーグ リチャード・ウィドマーク リチャード・トッド アントン・ウォルブルッグ ジョン・ギールグッド

全体的に科白に頼った作りの映画で、どうもこういうのは好きになれん。宗教色が濃いのも苦手で・・・。歴史には忠実に作ってあるんだろうけどね。こういう映画には不可欠な映画的スペクタクルもあまり感じさせず、日本劇場未公開も納得の凡作。

ジャンヌ・ダルクものは、ドライエルのサイレント期の傑作『裁かるゝジャンヌ』が金字塔として聳え立っているだけに、トーキー以降の作品はなかなか厳しい局面に置かれることも事実。

★★★☆☆☆☆☆☆☆

ロープ

Rope
1948年/アメリカ
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:ジェームズ・スチュワート ファーリー・グレンジャー ジョン・ドール セドリック・ハードウィック コンスタンス・コリアー 

まあ実験精神に溢れた意欲作であることは認めるんだが、これじゃあつまらないと思う。全編ワンカットっぽく撮影しているが、室内で進行する物語なので、舞台劇をそのままカメラで撮ってるような感じ。つまり、映画的な興奮、昂揚感がまったく感じられない。

主役2人の完全犯罪(笑)があまりにも杜撰だし、サスペンスとしても面白いところはひとつもない。ジェームズ・スチュワートのラストの行動も意味不明。ワンカットがあまりにも長いためか、登場人物がカンペを見ているっぽいところも多く目につく。明らかな失敗作でしょう。

★★☆☆☆☆☆☆☆☆

2009年10月22日

28週後...

28 Weeks Later
2007年/イギリス=スペイン
監督:フアン・カルロス・フレスナディージョ
出演:ロバート・カーライル ローズ・バーン ジェレミー・レナー ハロルド・ペリノー キャサリン・マコーマック マッキントッシュ・マグルトン

『28日後...』の続編だが、こちらのほうが個人的には好き。この続編もカメラが動きすぎ、カットの割りすぎで、せっかくの惨劇の場面で何が起こっているのかよくわからないのだけども、ビルのスナイパーから逃げる場面の緊張感の持続はなかなかのものだし、集団パニックものとして及第点のデキだと思う。

ヘリコプターのプロペラで感染者たちを一網打尽にする場面のスプラッタ描写は強烈だ。あのシーンは『ゾンビ』への過大なオマージュか。暗視スコープを頼りに真っ暗な地下鉄構内をそろそろと進むシーンと、その後に訪れるカタルシス。この監督はなかなか巧いと思うぞ。

★★★★★★☆☆☆☆

2009年10月20日

28日後...

28 Days Later...
2002年/イギリス=オランダ=アメリカ
監督:ダニー・ボイル
出演:キリアン・マーフィ ナオミ・ハリス クリストファー・エクルストン ミーガン・バーンズ ブレンダン・グリーソン レオ・ビル

人っ子一人いないロンドンの町並みを映し出した前半はかなりいい雰囲気なのだが、軍がでしゃばってくる後半になると描かれるのは単なる人間同士のイザコザばかりで、モンスター活劇を期待していた身としてはガッカリしてしまう。どうも隠喩というかメッセージ性が(特に後半は)前面に出てきており、自分は「映画を観てメッセージや社会風刺を汲み取ることだけは絶対に避けたい」と常日頃から思っているだけに、どうにもやるせなかった。

デジタルカメラを使ったザラついた感度の映像はこの映画にはマッチしていると思う。カラスが啄ばんだ感染者の死体から血が一滴だけおっさんの目に入る(そこから感染)というアイデアはなかなか。

★★★★☆☆☆☆☆☆

2009年10月17日

バード

Bird
1988年/アメリカ
監督:クリント・イーストウッド
出演:フォレスト・ウィッテカー ダイアン・ヴェノーラ マイケル・ゼルニカー キース・デヴィッド サミュエル・E・ライト

なんて厳しい映画だろう。イーストウッドが20年前に撮り上げた映画だが、『ミリオンダラー・ベイビー』で見せた厳格さと透明さが、既に20年前に体現している事実。フォレスト・ウィッテカーの身のこなし。2時間40分をあっと言う間に見せてしまう卓越した演出力。やっぱりイーストウッドはすごい。

娘が死んだことを聞かされ、妻へひたすら電報を打つウィッテカー。そして、それを厳格に見つめるイーストウッドの演出とジャンク・N・グリーンの冷徹なカメラ。映画的時間をフィルムに定着させる術を知り尽くした演出家によってもたらされる、荘厳な瞬間。これは紛れもない「映画」だ。

★★★★★★★★★☆

あらくれ

1957年/東宝
監督:成瀬巳喜男
出演:高峰秀子 加東大介 森雅之 上原謙 仲代達矢 
三浦光子 東野英治郎 岸輝子 中北千枝子

すごいなあ。「あらくれ」ってのは高峰演じる主人公の女のことだったのね。何度目かの夫婦喧嘩で、高峰が加東大介にホースで水をぶっかける(しかも室内で!)シーンの、高峰の「こんちくしょう!」という表情と、そのあとのカットで身体を寄せ合って仲直りする場面の可愛げな表情のコントラストが見事だ。正直言うと高峰秀子という女優さんは個人的にそんなに好きではないのだけども、やはりうまいなあと感心するばかり。

中盤、快晴の中を洋服を着て颯爽と自転車で突っ走る高峰を斜正面からとらえたショットと、ラストシーン、激しい雨の中を番傘をさしてゆっくり歩いていく高峰を後ろからとらえたショット、この対比も素晴らしいと思う。とにかくいろんな当時の東宝スター俳優が出まくっている映画だが、これはまぎれもなく高峰の映画だ。

★★★★★★★☆☆☆

宇宙戦争

War of the Worlds
2005年/アメリカ
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:トム・クルーズ ダコタ・ファニング ジャスティン・チャットウィン 
ティム・ロビンス ミランダ・オットー

2度目の観賞だが、やはりイイじゃないか。とてもいい。

まるで『激突!』や『ジョーズ』に立ち返ったかのようなスピルバーグの腕白ぶりが嬉しい。何よりここには映画らしい活劇がある。余計な人間ドラマは極力排除し、B級っぽくコンパクトにまとめてるところも好感が持てる。というのも、地球に宇宙人が攻めてきたワー大変だ!という状況なのに、船とか地下室とか小さめの空間でアクションが展開するのだ。地球全体を覆う惨劇は、テレビクルーの小さなモニターで確認するという、徹底したB級っぷり。(言うまでもないが、ここでのB級ってのは褒め言葉です。)

「ドラマが薄い」という観方もあるようだが、もともとスピルバーグは人間ドラマにはあまり興味がないように思うわけです。傑作『プライベート・ライアン』では冒頭30分でやりたいことをすべてやり尽くしたように、スピルバーグにとって人間ドラマを盛り込むことは、自分の好きな残酷描写や活劇、銃の撃ち合いを徹底的に満喫するための免罪符に他ならないと思う。

クルーズと長男の親子のドラマがどうにも取ってつけたような感じがするのはそのためだろう。「このくらいやっときゃいいでしょ?」というスピの呟きが聞こえてきそうだ。114分という近年のアメリカ映画にしてはコンパクトな上映時間も、この人間ドラマ部分が希薄なおかげである。

★★★★★★★★☆☆

2009年10月15日

恐竜時代

When Dinosaurs Ruled the Earth
1969年/イギリス
監督:ヴァル・ゲスト
出演:ヴィクトリア・ヴェトリ ロビン・ホードン パトリック・アレン

ハマーが製作した恐竜映画。

こういう特撮映画の宿命とも言えるのだが、恐竜が暴れるシーンとそれ以外のシーンのテンションの差は如何ともし難い。恐竜のストップモーション・アニメの出来はとてもいいし(特にトリケラトプスと巨大蟹の造形は出色だ)、その泣き声の邪悪さもなかなか際立っているのだが、特撮シーンはどっちかというと脇役的な扱いで、人間対人間、あるいは人間対自然のドラマに終結しているのがどうも気に入らない。

★★★★☆☆☆☆☆☆