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2009年11月21日

秋日和

1960年/松竹
監督:小津安二郎
出演:原節子 司葉子 岡田茉莉子 佐田啓二 佐分利信 沢村貞子 桑野みゆき 島津雅彦 笠智衆 北竜二

『晩春』では笠の娘役だった原節子が、本作では司葉子の母親役っていうのは果たしてどうなのかw まぁそれを映画史的な事実として観客に納得させむるのは、さすが小津と言っておこうか。

最後のシーンが地方の温泉宿であるところは、なるほど『晩春』の換骨奪胎かもしれない。ストーリーとしてはとても面白いのだけど、映画の一作品としては果たしてどうなのだろう? 原節子はもちろんイイし、岡田茉莉子のドライ加減なんかもとても清々しいのだけど。いや、この映画は岡田茉莉子の映画と言ってもイイのかもしれない。

傑作だと思う。

★★★★★★★★☆☆

2009年11月3日

東京暮色

1957年/松竹
監督:小津安二郎
出演:原節子 有馬稲子 笠智衆 山田五十鈴 杉村春子 高橋貞二 田浦正巳 山村聰 信欣三 藤原釜足

暗い。とても暗い小津作品。自宅に有馬稲子が静かに帰宅する場面などは、まるで60年代イギリスの恐怖映画のような演出。

かなり(小津としては)ドラマティックな構成を、小津らしい淡々としたリアリズムで演出しようと試みるあまり、140分という、当時の日本映画としてもかなりの長尺になってしまい、結果的にはやはりこの長さがこの映画の致命傷と思う。(でも、これでもかなり省略した部分があるのではないかな?)

有馬稲子に尽きる。陰鬱だが、やはりキレイな女優さんだ。山田五十鈴もさすがの存在感。ラスト、青森行きの列車で窓を開けて覗き込み、ウイスキーをぐいと呷る場面。うまいです。

★★★★★★☆☆☆☆

2009年10月24日

晩春

1949年/松竹
監督:小津安二郎
出演:笠智衆 原節子 杉村春子 月丘夢路 青木放屁 宇佐美淳 三宅邦子 三島雅夫 坪内美子 桂木洋子

父・笠智衆と娘・原節子の親子の愛情は倒錯したエロティシズムすら感じさせるが、父娘の京都の宿でのやり取りがすんでのところで近親相姦的なイメージを想起させずに済むのは、笠のキャラクターのおかげだろう。原の演技はかなりこの映画では際どい。

杉村春子の存在感がこの映画では際立っている。中でも、「熊太郎」をめぐる笠との掛け合いや、がまぐちを拾って喜び神社の階段を駆け上がる場面、そして、グローブを持った子供とのやりとり。この幸福感と可笑しさがもう最高だ。

冒頭の北鎌倉駅から、鎌倉の街並み。笠の鎮座する窓際の机と座布団。月丘夢路が笠のおでこにキスをする小料理屋。原がたゆまぬ視線の演技を見せる能の場面。などなど、印象的な細部を挙げていけばキリがないほど。

ハリウッド全盛期のような格調と風格を持った、小津中期の堂々たる傑作。

★★★★★★★★☆☆

2009年8月26日

浮草

1959年/大映
監督:小津安二郎
出演:中村鴈治郎 京マチ子 杉村春子 若尾文子 川口浩 
野添ひとみ 笠智衆 三井弘次 田中春男 入江洋吉

まったくもって小津らしい緊張感が持続しない画面作りのため、ちょっと中盤で中だるみしてしまうのだが、これは大映の美術のせいもあるかもしれない。なんかこうセットや美術全体が雑然としていて、小津の特徴であるキッチリ決まった構図がちょっとブレているのだ。

しかしこれは、我々が、サイレント時代からの小津の画面の組み立てに慣れ親しんでしまったからかもしれず、新たな地平を模索する小津の野心だったのかもしれない。この『浮草』がまったく小津らしくないが故にダメだと言い切る人は、よっぽどの愚鈍か、あるいは相当な悪意の持ち主だろう。

中村鴈治郎の台詞回しや身のこなしには目を見張るものがある。京マチ子の可愛さ、そして、川口浩とのキスシーン。胸がドキドキした。

★★★★★★★☆☆☆