2009年10月24日

晩春

1949年/松竹
監督:小津安二郎
出演:笠智衆 原節子 杉村春子 月丘夢路 青木放屁 宇佐美淳 三宅邦子 三島雅夫 坪内美子 桂木洋子

父・笠智衆と娘・原節子の親子の愛情は倒錯したエロティシズムすら感じさせるが、父娘の京都の宿でのやり取りがすんでのところで近親相姦的なイメージを想起させずに済むのは、笠のキャラクターのおかげだろう。原の演技はかなりこの映画では際どい。

杉村春子の存在感がこの映画では際立っている。中でも、「熊太郎」をめぐる笠との掛け合いや、がまぐちを拾って喜び神社の階段を駆け上がる場面、そして、グローブを持った子供とのやりとり。この幸福感と可笑しさがもう最高だ。

冒頭の北鎌倉駅から、鎌倉の街並み。笠の鎮座する窓際の机と座布団。月丘夢路が笠のおでこにキスをする小料理屋。原がたゆまぬ視線の演技を見せる能の場面。などなど、印象的な細部を挙げていけばキリがないほど。

ハリウッド全盛期のような格調と風格を持った、小津中期の堂々たる傑作。

★★★★★★★★☆☆

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