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2010年2月7日

戦後最大のスター、若尾文子

『女は二度生まれる』

1961年/東宝
監督:川島雄三
出演:若尾文子 山村聰 フランキー堺 藤巻潤 江波杏子 山岡久乃 倉田マユミ 村田知栄子 高野通子 紺野ユカ 

評点:★★★★★★★☆☆☆

 川島はすごいなぁ。行き当たりばったりな若尾文子の生き方に感情移入は正直できなかったのだけど、もう演出が完璧で参ってしまった。ややあおり気味のショットとか、はざまに障害物を置いてのカメラの使い方などは、撮影監督ではなく川島雄三のセンスだと思う。
 山村聰が唐突に死んでしまうシーンのシンプルな残酷さ。そして、高校生の少年と思いつきで長野へ行くシーンの、不都合な不条理さ。さらにここでは昔少しねんごろになったフランキー堺と出会う。その視線の微妙な交わり。
 しかし何より、若尾文子の可愛さがこの映画を支えている。紛れもなく戦後日本映画最大のスターのひとりでしょう。この危うい美しさと可愛さを見よ!!

2009年12月20日

幕末太陽傳

1957年/日活
監督:川島雄三
出演:フランキー堺 左幸子 南田洋子 石原裕次郎 芦川いずみ 市村俊幸 金子信雄 山岡久乃

面白い。とても面白いが、世間で言われるほどの傑作ではないと思う。

川島のアクターズディレクションの巧みさはここでも素晴らしいし、フランキー堺のコミカルなセリフ回しと動きなんて見てて惚れ惚れするのだが、今ひとつ全体に散漫な印象を与えるのは、カットごとの余韻がちょっと短すぎるからかもしれない。おそらく長尺になるのを恐れての処置だったのだろうが、130分近くになってもいいから、もう少しワンカットワンカット毎のイメージの残響が欲しかった気もする。

★★★★★★★☆☆☆

2009年11月24日

暖簾

1958年/東宝
監督:川島雄三
出演:森繁久弥 山田五十鈴 中村鴈治郎 乙羽信子 中村メイ子 浪花千栄子 

森繁久弥が父と息子の1人2役を演じる。途中まで気付かなかったが(笑) シネスコの利点を最大限に駆使し、この1人2役を川島は巧く演出している。

山田五十鈴と結婚した初夜の、五十鈴のあまりの肝っ玉ぶりと森繁の情けなさの対比。そしてその直後、屋台うどん屋で寄り添ってうどんをすするシーン。森繁が死ぬラストまで一気に、涙と笑いをふんだんに盛り込んで見せる川島はさすが。

★★★★★★☆☆☆☆

2009年11月7日

夜の流れ

1960年/東宝
監督:成瀬巳喜男 川島雄三
出演:司葉子 山田五十鈴 宝田明 三橋達也 白川由美 水谷良重 草笛光子 越路吹雪 志村喬

成瀬と川島の監督としての力量が如何なく発揮されている佳作だが、やはり共同監督のせいか、それぞれのエピソード同士のまとまりに欠け、全体として散漫な印象を与える。ミもフタもないことを言ってしまえば、失敗作かもしれない。冒頭のプールのシーンからして、「ちょっと違うなぁ」という感じがしてしまう。

しかし、山田五十鈴が三橋達也に台所で無理心中を謀る場面、宝田明が尻手駅で新しい花嫁の白川由美を電車飛び込みで失う場面など、衝撃的かつ魅力的な細部に満ち溢れている。五十鈴が46歳という設定で、すっぴんの顔まで晒すわけだが(撮影当時43歳)、三橋に迫る場面の迫力は凄まじい。

成瀬巳喜男、そして川島雄三。二人とも日本を代表する演出家だ。それぞれが単独で監督した映画をやはりたくさん観たい!

★★★★★★☆☆☆☆

2009年9月24日

花影

1961年/東宝
監督:川島雄三
出演:池内淳子 佐野周二 池部良 三橋達也 高島忠夫 淡島千景

傑作。これは役者の力、すなわち川島の鮮烈なアクターディレクションに支えられた作品だ。特に、もうこれは完全に池内淳子の映画だと言い切ってしまってもいいと思う。彼女が映るカットだけが画面の密度が他とはぜんぜん違う。例を挙げれば、湯河原の旅館の縁側から夜の庭園を見つめるカットや、夜桜を見上げて「食べてしまいたいくらいキレイ」と呟くカット(ここでは、照明担当もとても良い仕事をしている)。

池内は、近づいてきた男は必ず惚れてしまうという役柄に恥じないファムファタールぶり。振り回される野郎どもはみんな手に負えずに離れて行ってしまうのだが、湯河原の女将の「あの人は女性としてキレイすぎるのよ」というセリフが全てを物語っている。淡島千景はこのセリフを言うためだけに出演しているといっても過言ではない。また、高島忠夫の手の平返しっぷりがとても面白い。若いツバメが年上の悪女に惚れるとこうなるという典型だ(笑)

池内が自殺する直前の、佐野周二の呟きがグッとくる。「人間は自殺するほど高等な生き物じゃない」。

★★★★★★★★☆☆

2009年7月9日

喜劇 とんかつ一代

1963年/東宝
監督:川島雄三
出演:森繁久弥 フランキー堺 淡島千景 加東大介 三木のり平 
池内淳子 木暮実千代 水谷良重 団令子 岡田真澄

講談社から出版された「501映画監督」という、古今東西の映画監督を501人紹介した本があり、資料としても読み物としても良さそうだと思い、3000円も出してアマゾンでそそくさと購入したわけです。

しかしこれがまた何ともふざけた本でして、索引は全てファーストネームという馬鹿げたシロモノ。しかも、まあ元々の監修がアメリカ人だから仕方ないとしても、日本でほとんど作品が見られない監督も501人中200人くらいいて、果たしてこれは日本の書店で大きなスペースを取って発売する必然性があったのだろうか。

だいたい、傑作『スウィート・ムービー』を撮ったユーゴの鬼才ドゥシャン・マカヴェイエフが載っていないのはまだご愛嬌としても、『ポゼッション』のアンジェイ・ズラウスキー(ソフィー・マルソーの元夫)や、『顔のない殺人鬼』『幽霊屋敷の蛇淫』のアンソニー・ドーソンすら抜け落ちているというお粗末さ。日本映画に目を移すと、マキノ雅弘や中川信夫の名前がない。この『喜劇 とんかつ一代』の稀代の演出家、川島雄三も除外されている。これはもう質の悪い冗談としか思えない。映画史にとって、勅使河原宏や今村昌平なんぞより川島雄三の名前が遥かに重要なのは、火を見るより明らかである。

のっけから脱線してしまったが、この『喜劇 とんかつ一代』は久々の川島雄三との再会だ。流れるようなアクターズ・ディレクションと人物配置。これはもう、彼のセンスが成せる業としか言いようがない。良い意味で、日本映画っぽくないのだ。ズーミングやクローズアップを殆ど使用しないのはカメラの岡崎宏三の影響もあろうが、川島の慎み深さも感じられる。

題材はまったくのコメディ映画だが、この映画が公開されたとき、場内はアハハ笑いでなくウフフ笑いで満たされたであろう。多くの登場人物を処理しきれてない部分はあるのだが、シーンひとつひとつがとても面白く、特にクロレラ研究の三木のり平と、クロレラ料理ばっかり食わされる妻の池内淳子がとてもいい。加東大介は相変わらずここでも厳格。演技云々ではなく存在自体が厳格だ。

★★★★★★★☆☆☆