1963年/東宝
監督:川島雄三
出演:森繁久弥 フランキー堺 淡島千景 加東大介 三木のり平 池内淳子 木暮実千代 水谷良重 団令子 岡田真澄
講談社から出版された「501映画監督」という、古今東西の映画監督を501人紹介した本があり、資料としても読み物としても良さそうだと思い、3000円も出してアマゾンでそそくさと購入したわけです。
しかしこれがまた何ともふざけた本でして、索引は全てファーストネームという馬鹿げたシロモノ。しかも、まあ元々の監修がアメリカ人だから仕方ないとしても、日本でほとんど作品が見られない監督も501人中200人くらいいて、果たしてこれは日本の書店で大きなスペースを取って発売する必然性があったのだろうか。
だいたい、傑作『スウィート・ムービー』を撮ったユーゴの鬼才ドゥシャン・マカヴェイエフが載っていないのはまだご愛嬌としても、『ポゼッション』のアンジェイ・ズラウスキー(ソフィー・マルソーの元夫)や、『顔のない殺人鬼』『幽霊屋敷の蛇淫』のアンソニー・ドーソンすら抜け落ちているというお粗末さ。日本映画に目を移すと、マキノ雅弘や中川信夫の名前がない。この『喜劇 とんかつ一代』の稀代の演出家、川島雄三も除外されている。これはもう質の悪い冗談としか思えない。映画史にとって、勅使河原宏や今村昌平なんぞより川島雄三の名前が遥かに重要なのは、火を見るより明らかである。
のっけから脱線してしまったが、この『喜劇 とんかつ一代』は久々の川島雄三との再会だ。流れるようなアクターズ・ディレクションと人物配置。これはもう、彼のセンスが成せる業としか言いようがない。良い意味で、日本映画っぽくないのだ。ズーミングやクローズアップを殆ど使用しないのはカメラの岡崎宏三の影響もあろうが、川島の慎み深さも感じられる。
題材はまったくのコメディ映画だが、この映画が公開されたとき、場内はアハハ笑いでなくウフフ笑いで満たされたであろう。多くの登場人物を処理しきれてない部分はあるのだが、シーンひとつひとつがとても面白く、特にクロレラ研究の三木のり平と、クロレラ料理ばっかり食わされる妻の池内淳子がとてもいい。加東大介は相変わらずここでも厳格。演技云々ではなく存在自体が厳格だ。
★★★★★★★☆☆☆
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