2009年2月7日

クラッシュ

Crash
2004年/アメリカ
監督:ポール・ハギス
出演:サンドラ・ブロック ブレンダン・フレイザー ドン・チードル マット・ディロン ウィリアム・フィクトナー ジェニファー・エスポジート ダンディ・ニュートン テレンス・ハワード ライアン・フィリップ クリス・"デュダクリス"・ブリッジス

これは映画に限らずTVドラマや小説でも同じなのだが、作品から教訓を得ようとしたり、テーマを読み取ろうとする見方は好きじゃない。なぜなら「作り手が何を伝えたかったか」なんぞ、本人に訊いてみないとわからないからだ。そんな傲慢なスタンスで映画を観ることなんてできない。

この『クラッシュ』は人種差別や銃問題がテーマであることは小学生が見たって明白だが、ミもフタもないことを言ってしまえばそんなことにはあまり興味がない。もっと言えば、優れた人間ドラマにも興味はない。映画でしか表現しようのない、「これが映画だよなぁ」と思わせてくれる場面や画に遭遇するために、ひたすら映画を観続けているのかもしれない。

しかし、大傑作『マグノリア』を彷彿とさせる群像劇である本作、じつに力のある映画で、「優れた人間ドラマ」だ。思い切って、近年のアメリカ映画を代表する大傑作と言い切ってしまおうじゃないか。久々に魂を揺さぶられた。

テレンス・ハワードのTVディレクターを若い警官が威嚇する場面、マット・ディロンがクラッシュして横転した車から女性を助け出す場面、鍵の修理工と銃を持ったペルシャ人の店主が対峙する場面・・・ 数え上げればキリがないが、みなぎる張り詰めた緊張感はシナリオだけではなくポール・ハギスの演出と役者の演技の賜物。また、この話を110分そこそこにまとめ上げられたのは、ハギスが優れた演出家である証拠だ。(フランク・ダラボンやある種の日本映画なら2時間半かかるだろう)

人間描写に深みがない? ご都合主義? そんなくだらんこと言ってるから、「最近のハリウッドはつまらない」などと、おかしな言いがかりを信じるハメになるんだよ! テレンス・ハワードの表情や佇まいを始め、画面をちゃんと凝視してるなら、そんなこと口が裂けても言えないはずなのに。

しかし、この映画がアカデミー賞だなんて信じられる? アメリカ人も捨てたもんじゃないな。

★★★★★★★★★☆

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