2009年9月10日

四谷怪談(1959)

1959年/大映
監督:三隅研次
出演:長谷川一夫 中田康子 鶴見丈二 近藤美恵子 浦路洋子

三隅研次監督、主演に長谷川一夫を迎えた、大映製作の異色四谷怪談。なにせ伊右衛門が悪人ではなく至極まっとうな優しい人物として描かれており、周囲の悪人らによってお岩が殺されてしまうのに、お岩は毒殺後、伊右衛門のもとに化けて出る。伊右衛門はもうどうしていいのかわからずに「悪かった」「許してくれ」と何もしていないのに謝るわけだが、それでもお岩は許さない。このえげつなさはかなり怖い。怖さという点では、お岩さんものでは「最怖」なんじゃないか。

小学生のとき初めてこの映画を観たのだが、「悪いことをしなければお化けは出ない」と信じていた自分に、強烈なストレートパンチを浴びせた作品であった。お岩を殺したりその策略をしたのは伊右衛門ではなく周囲の人間であり、伊右衛門はぜんぜん悪くないのだが、あの世に逝くとそういう事実も全てお見通しになるんじゃないのかと思ったら大間違い。お岩は「伊右衛門が悪い」との固定観念に凝り固まり、ひたすら伊右衛門のもとに出る。

まあ、長谷川一夫主演がありきであれば、彼を悪役にするわけにもいかず、ストーリーの脚色を余儀なくされたのかもしれない。それが結果的には、得体の知れぬ理不尽さを獲得する結果となり、映画としては成功していると思う。

★★★★★★★☆☆☆

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