2009年11月15日

マルホランド・ドライブ

Mulholland Drive
2001年/アメリカ
監督:デヴィッド・リンチ
出演:ナオミ・ワッツ ローラ・エレナ・ハリング アン・ミラー ジャスティン・セロー ダン・ヘダヤ マーク・ペルグリノ ブライアン・ピーコック


有無を言わさぬ大傑作。

もう何度も何度も何度もこの作品を観ているが、俺はその度にいつも泣いてしまう。それは、ナオミ・ワッツの登場の可憐さと、後半の加速度的に崩れてゆく佇まいの対比だけでは決してない!(しかしながら、ここでのナオミ・ワッツの演技力の凄まじさといったら特筆モノなんだが!) はたまた、ローラ・ハリングの前半の脅えっぷりと後半のふてぶてしさの対比か?(いや、最初からこのハリングのスタンディングは図抜けていたではないか!シャワーを浴びているところをワッツに見られた場面の立ち姿はどうだ!)

長い映画で、ミステリーとしてもサイコ・サスペンスとしても筋立てがとてもよく出来ており(あくまでリンチの映画としては、という注釈は付くのだけどね)、殺人事件を私立探偵まがいに捜索するワッツとハリングももちろんなのだが、ブルーボックスの小道具としての筋立てや、カフェで打ち合わせする気の弱そうな男と刑事のやり取り。どうやら彼らは悪夢を見ていたらしい。しかし、カフェを出たあとの裏通りで悪夢に出たままの浮浪者と対峙し気を失う場面の凄まじい悪意の発散! そして、中盤に唐突に出現するスペイン語での歌劇。「泣き女」の”圧倒的”と呼ぶしかない存在感!

人生で何度か出会うことのできる、魂を根本から揺さぶられる映画です。やっぱりデヴィッド・リンチはすごい。あまりにも切ない切ない、恋愛映画の大傑作。この映画を観ていない人は人生を少しばかり損している、かもしれないね。そう、映画にとって何が重要かは結局、ストーリーの辻褄合わせではなく、映像と音響に他ならないのだから。

観終わったあと、あまりのショックでしばらく座席から立てなくなる映画がたまにある。私にとってはそんな作品のひとつです。凄まじい情感を発動する映画の中の映画。 絶対的映画。

★★★★★★★★★★

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