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2009年10月10日

ブルジョワジーの秘かな愉しみ

Le Charme Discret de la Bourgeoisie
1972年/フランス
監督:ルイス・ブニュエル
出演:フェルナンド・レイ デルフィーヌ・セイリグ ジャン=ピエール・カッセル 
ポール・フランクール ステファーヌ・オドラン ジュリアン・ベルトー

ここでもブニュエルのシュールなギャグが炸裂しまくる!

家で食事会のはずがホストが日付を間違え、レストランに行けば店の奥では支配人の死体があり気色悪くて食事どころではない。カフェに行けば紅茶もコーヒーも品切れで水しかなく、やっと食事ができる!と思ったら軍隊の演習に巻き込まれる・・・ってな具合で、ブルジョワの価値観や日常を徹底的に茶化してみせるのだが、そこは天才ブニュエルのこと、一筋縄で行くはずもない。

ある事柄の理由を説明する場面に飛行機やタイプライターの音を被せてみせたり、パーティで些細な口喧嘩からいきなり銃を撃ったり、どこまでが現実かどこからが夢なのかあいまいな作りになっている。劇中とラストに3度ほど出てくる、果てない一本道を出演者たちが会話するでもなくひたすら歩き続ける場面と相俟って、映画全体がかなり綿密に考え抜かれた構成だと思う。驚くほど完成度の高い作品だ。

★★★★★★★★☆☆

2009年8月16日

銀河

La Voie Lactee
1968年/フランス=イタリア
監督:ルイス・ブニュエル
出演:ポール・フランクール ローラン・テルジェフ アラン・キュニー 
デルフィーヌ・セイリグ ピエール・クレマンティ エディット・スコブ

キリスト教の宗教的なモノが色濃く出過ぎていて、俺のような無神論者には極めて判りにくい題材である。「ブニュエルも無神論者なんだなぁ」ってのはよく理解できるけども、テーマ性が勝ちすぎていて、映画ファンとしてはちょっとキツイ展開。

キリスト教~大義の宗教への揶揄・・・というか、宗教を徹底的に茶化そうとしたブニュエルの志は最大限に評価するとしても、映画としては平均点を上回るデキではないと思う。

★★★★☆☆☆☆☆☆

2009年8月1日

皆殺しの天使

El Angel Exterminador
1962年/メキシコ
監督:ルイス・ブニュエル
出演:シルヴィア・ピナル エンリケ・ランバル ルシー・カジャルド

ブニュエルの堂々たる傑作室内劇。ヘンだヘンだとよく言われる映画だが、いやぜんぜんヘンじゃない。冒頭のやつだって撮影ミスでも演出ミスでもなんでもなく、ちゃんと意図してやってるのだ。

物語は、オペラ帰りにディナーのため邸宅に集まったブルジョワジー達が、なぜかその屋敷から出られなくなる、という至極単純なもの。ブニュエルのクールな突き放しは素晴らしく、理由はいっさい説明されない。冒頭の給仕たちの「さっさと逃げるのが当たり前」のような言動は、災害を予兆したネズミが大量に移動することを想起させる。

細かい演出の凄みを挙げればキリがないのだが、まったく、「清濁併せ呑む」という慣用句がブニュエルほど似合う人もいないだろう。熊や羊などの動物の使い方がとてもブニュエルらしくて嬉しくなる。特にラスト、羊たちの群れが何かの建物の中に追い立てられるように入っていく場面にFINの文字が重なる。こういうセンスがたまらなく好きだ。傑作でしょう。

★★★★★★★★☆☆

2009年7月26日

グラン・カジノ

Gran Casino
1946年/メキシコ
監督:ルイス・ブニュエル
出演:リベルタ・ラマケル ホルヘ・ネグレーテ メルセデス・バルバ

ブニュエルのメキシコ亡命後の第1作。前作『糧なき土地』から実に14年ぶりということになる。

なんの脈絡もなく突然に登場人物が堂々と歌いだすミュージカル場面は、マキノ雅弘あたりに通ずるものがあるな。シナリオは超御都合主義のプロットなのだが、そういった歌の挿入が逆に、シナリオの欠陥を補う効果を発揮している。実際、ミュージカルシーンがなかったら退屈で耐えられない作品になっていたんじゃないか。

★★★★★☆☆☆☆☆

2009年3月20日

昼顔

Belle de Jour
1967年/フランス
監督:ルイス・ブニュエル
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ ジャン・ソレル ジュヌヴィエーヴ・バージュ 
ミシェル・ピコリ マーシャ・メリル ピエール・クレマンティ

ブニュエルって本当に趣味がいい。まぁいろんな意味でそうなんだけど(エスプリの効いた台詞もそうだが)、ドヌーヴに着せてる衣装はイヴ・サンローランでしょこれ。あと、テニススクールでの超ミニスカートとかさ、鼻血もんですよこれわ。

ドヌーヴもメチャメチャいいんだが、なんつってもピエール・クレマンティのエキセントリックさが最高だわこれ。ナイフの仕込み杖とか、何をやらかすかわからんアブナイ雰囲気が漂ってる。

ミシェル・ピコリとマーシャ・メリルのコンビもいいですね。この頃のフランス映画は、こういう俳優が居るからイヤになる。ある意味反則でしょw あと、ジャン・ソレルの落ち着いた佇まい。

今あらためて見直すと、ブニュエルが巨匠として堂々たる演出を見せている。ドヌーヴの幼少時代のフラッシュバックとか、ブニュエルにしては珍しい表現。

★★★★★★★★☆☆

2009年2月21日

ビリディアナ

Viridiana
1960年/スペイン
監督:ルイス・ブニュエル
出演:シルヴィア・ピナル フェルナンド・レイ フランシスコ・ラバル マルガリータ・ロサーノ

ブニュエルの中ではテーマ性が勝ちすぎていて、まぁ個人的な趣味もあるが、映画としての出来はあまり良くないと思う。なんとなく作りが雑でいい加減なところがあり、特に浮浪者を集めるくだり以降の散漫な演出。

ただ、シルヴィア・ピナルの美しさは素晴らしい。やはりブニュエルも女性を魅力的に撮ることができる演出家だ。

★★★★★☆☆☆☆☆

2009年1月13日

忘れられた人々

Los Olvidados
1950年/メキシコ
監督:ルイス・ブニュエル
出演:ロベルト・コボ エステラ・インダ アルフォンソ・メヒア


さて、ブニュエルinメキシコである。
初期の『アンダルシアの犬』や『黄金時代』のシュールさも好きだし、『ビリディアナ』以降の自由奔放な出鱈目さも捨てがたいが、彼が最も光り輝いていたのはメキシコ時代だよなぁ。

本作は感化院のPR要請を受けて撮られた映画ということだが、そういったプログラムピクチャーの枠組みの中で しっかりと優れた映画を作る人には敬意を表したい。フライシャーしかり、ドン・シーゲルしかり、マキノ雅弘しかり。

観客までも突き放したニヒルな視線は独自のもので、ブニュエルは人間ドラマに興味が無いことが一目瞭然だが、 唐突な鳥の出現や、女の足へのフェチシズムなどいわゆる「ブニュエルらしい」記号をあげつらって語るのは、ブニュエルに失礼だと思う。

・・・が、ハッとさせられるシーンがある。ペドロがカメラに向って卵を投げつける場面。「あのね、これは映画なんですよ」の再確認。ブニュエルも人が悪いなぁ(笑)

★★★★★★★★★☆