2009年8月1日

皆殺しの天使

El Angel Exterminador
1962年/メキシコ
監督:ルイス・ブニュエル
出演:シルヴィア・ピナル エンリケ・ランバル ルシー・カジャルド

ブニュエルの堂々たる傑作室内劇。ヘンだヘンだとよく言われる映画だが、いやぜんぜんヘンじゃない。冒頭のやつだって撮影ミスでも演出ミスでもなんでもなく、ちゃんと意図してやってるのだ。

物語は、オペラ帰りにディナーのため邸宅に集まったブルジョワジー達が、なぜかその屋敷から出られなくなる、という至極単純なもの。ブニュエルのクールな突き放しは素晴らしく、理由はいっさい説明されない。冒頭の給仕たちの「さっさと逃げるのが当たり前」のような言動は、災害を予兆したネズミが大量に移動することを想起させる。

細かい演出の凄みを挙げればキリがないのだが、まったく、「清濁併せ呑む」という慣用句がブニュエルほど似合う人もいないだろう。熊や羊などの動物の使い方がとてもブニュエルらしくて嬉しくなる。特にラスト、羊たちの群れが何かの建物の中に追い立てられるように入っていく場面にFINの文字が重なる。こういうセンスがたまらなく好きだ。傑作でしょう。

★★★★★★★★☆☆

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