2009年3月13日

パンチドランク・ラブ

Punch-Drunk Love
2002年/アメリカ
監督:ポール・トーマス・アンダーソン
出演:アダム・サンドラー エミリー・ワトソン フィリップ・シーモア・ホフマン


ポール・トーマス・アンダーソン(以下、PTA)といえば、あれだけ『マグノリア』に打ちのめされたってのに、最新作の『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』は気がつけばもう公開終わってるし、この『パンチドランク・ラブ』すら見てなかったとはどういうこった・・・。

しかしまぁ、見てなかったのを後悔する素晴らしい出来映え。冒頭、白い部屋でカスタマーサービスに神経質な電話をかけるアダム・サンドラー。もうこのシーンから一瞬たりとも画面から目を離せなくなる。

早朝の道路でいきなり目前に置かれる古びたオルガン。ノーブラで颯爽と登場する小ジワの目立つ35歳のエミリー・ワトソン。テレクラに電話する場面とダイアローグの冗長さはあえて狙ったものだろう。かけまくる、かかってきまくる電話、電話、電話の嵐。姉たちとのパーティーで唐突に窓ガラスをハンマーで叩き割るバリー。事務所の前に置かれる4個1セットのプリンの山。もはやPTA組ともいえる(家具屋の)フィリップ・シーモア・ホフマンの不敵さ。アダム・サンドラーは終始青いスーツ+青いネクタイ。ハワイに行くのも荷物も持たず着の身着のまま。そのすべてが心地いいのだ。

それにしても、なんなんだろうこの古典を見るような感覚は。それぞれの場面において唐突にクライマックスが訪れる様は、1920年代のサイレント映画を見てるようだ。バリーが経営する会社(この会社も何を業としてるのかよくわからん)もジャック・タチの『プレイタイム』を想起させる見事な映画的空間造形。

『マグノリア』の時も感じたことだが、PTAという人は、たぶん相当なシネフィルだな。かなりの数の映画を見てきてると思う。そして、やはり映画史から目を背けることはできない、そんな野暮ったい使命感の中で映画を撮っているんだろう。PTAは、不器用ゆえに職人に成り切れない宿命を背負った天才作家だという認識を、改めて強くした次第です。

なんだかよくわからんがこりゃエライこっちゃ。さっそくDVD買わねば。

★★★★★★★★★★

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