2009年3月20日

怒りの街

1950年/田中プロダクション
監督:成瀬巳喜男
出演:宇野重吉 原保美 若山セツコ 久我美子 岸輝子 志村喬 
村瀬幸子 浜田百合子 木匠久美子

いつも思うのだが、成瀬作品が素晴らしい最大の要因は、「物語がよくわかる」という点にあると思う。

まず物語(脚本)がある。それを全部カメラで撮るのは無理なわけで、何を見せて何を見せないでおくか、という選択の作業が次にくる。そうやって撮影したものを、どこを何秒、どういう順番で見せるかを決めていく。これが映画作りのプロセスだ。成瀬の場合、その作業をいとも簡単にやっている(ように見える)。自分では良くわかるが、果たしてそれが観客にもちゃんとわかるのか。そのへんのところを細心の注意をもって見極める能力が卓越しているのだ。

この『怒りの街』は、見事に人間の内面たる本性を描いた映画だ。原保美のクールさと宇野重吉の苦悶の表情がよい。妹・雅子を演じる若山セツコ! 若い頃の竹下景子に似てて、特に回想シーンで見られるセーラー服姿がとても可愛い。

例に漏れず、ストーリーが極めて簡潔に語られるのだが、原保美がラスト近くでヤクザに顔を切られるシーンなど、呆然とするしかないカットが突如目の前に現れる。だから油断ならない。

★★★★★★★☆☆☆

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