2009年12月17日

河内山宗俊

1936年/日活
監督:山中貞雄
出演:河原崎長十郎 中村翫右衛門 市川扇升 原節子 山岸しづ江 市川莚司 助高屋助蔵 坂東調右衛門

映画は複合芸術と言われるが、まったく映画ほど、驚くほど通俗的な賛辞の似合うメディアもそうは無いと思う。例えば「ガンアクションがカッコよかった」とか「ヒロインの女優さんが活き活きしていた」とか「音楽のタイミングが絶妙だった」など、他の芸術や文化(例えば絵画や詩、文学など)を前にしては恥ずかしくて口に出来ないような賞辞が次々と繰り出される。

本作はフィルムの状態がとても悪く、セリフが半分以上聞き取れない。字幕スーパーが欲しいくらいだ(BS2で見たが、DVDでは字幕が付いているらしい・・・。今度はDVDを借りてこよう)。それでもこれだけ面白いんだから大したモノだが、やはり先般の『丹下左膳餘話 百萬兩の壺』と比べると数段落ちる。まあ『丹下・・・』が空前絶後の大傑作だから仕方ないけどw それでも、河原崎長十郎の小粋な感じや若かりし頃の原節子の可愛さを、正にその通俗的な賛辞で支えることができる。そう、けっきょくは映画を見る楽しみの本質なんて、暗がりで俳優の顔を見つめることに他ならないのだから、そもそもが露骨で際どい性質のモノなのだ。

クライマックス、掘でのモブシーンにおける手前と奥行き、上下左右の空間の切り取り方には、山中貞雄の卓越したセンスを感じる。まったく映画的と言うしかない。まあ、なんというか、天才なんですねやっぱり。

★★★★★★★☆☆☆

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