2009年2月28日

不安

La Paura
1954年/西ドイツ=イタリア
監督:ロベルト・ロッセリーニ
出演:イングリッド・バーグマン マシアス・ヴィーマン レナンテ・マンハーツ 
クルト・クリューガー エリゼ・オーディンガー

『ストロンボリ』と比べると語り口も演出も凡庸だなぁ。やっぱりバーグマンのモノローグをナレーションで入れる、心理描写を説明するような手法が個人的には好きになれないのだ。手を抜いてるんじゃないかと思えてしまうので。

★★★★☆☆☆☆☆☆

ストロンボリ/神の土地

Stromboli, Terra di Dio
1949年/イタリア=アメリカ
監督:ロベルト・ロッセリーニ
出演:イングリッド・バーグマン マリオ・ビターレ レンツォ・シザーナ 
マリオ・スポンゾ ダエタノ・ファムラロ

シネフィル・イマジカでロッセリーニ+バーグマン三部作を放送中。

『無防備都市』を観たバーグマンが自らロッセリーニに売り込んだらしい。・・・と聞くと、『カミーユ・クローデル』のイザベル・アジャーニのような悲惨な結果になりはしまいかと思ってしまったが、杞憂でしたね。バーグマンとアジャーニではまるで女優の質が違う。

オリジナルフィルムの状態が悪いのか前半は見づらかったり、画面の繋ぎ(つまり編集)にけっこう雑な部分があったりするのだが、あんまり気にせず楽しめます。マグロ漁の場面から火山が噴火するまでの圧倒的なシークエンスと、バーグマンがひとりで火山を越えようとする斜面の描写。そして唐突に訪れるFINの文字。

★★★★★★★☆☆☆

2009年2月26日

怪談

2007年/松竹=オズ
監督:中田秀夫
出演:尾上菊之助 黒木瞳 井上真央 木村多江 麻生久美子 
津川雅彦 瀬戸朝香 榎木孝明 六平直政 村上ショージ

これはひどい。ちょっと納得しがたい冗長さ。最近の日本映画にありがちな冗長さも、ここまでくると犯罪レベルだ。『女優霊』や『リング』を撮った監督と同じ人とは思えない。まぁ、黒木瞳が幽霊役という時点で失敗作の臭いがプンプンしていたが・・・

最後はなぜか安っぽいチャンバラで茶を濁し(このシーンはあまりにも酷い。あんな場所で殺陣のシーンを撮るなんて、とても正気の沙汰とは思えないぞ・・・)、お師匠が新吉の顔を抱くラストカットでは大笑いしてしまった。

お師匠の死が判明するシーンも、あまりにも凡庸な演出。鶴田法男や黒沢清を見て勉強しなさい。

★☆☆☆☆☆☆☆☆☆

2009年2月24日

マンダレイ

Manderlay
2005年/デンマーク=スウェーデン=オランダ=フランス=ドイツ=アメリカ
監督:ラース・フォン・トリアー
出演:ブライス・ダラス・ハワード イザック・ド・バンコレ ダニー・グローヴァー 
ウィレム・デフォー ジェレミー・デイヴィス ローレン・バコール

『ドッグヴィル』の続編?なのかなこれは。説明的なナレーションが多すぎるとか、グレースが黒人奴隷を解放することに(あくまで説話論的なものだが)正統性を見出せないとか、そういった点に対する不満もあるのだろうが、やはりグレースがニコール・キッドマンじゃないのが致命的で、そのせいで今イチ最後まで映画に乗り切れないのだ。

テーマ的には、人種問題っつーよりアメリカのイラクへの介入を示唆してるんだろうけど、自分的にはどうでもいいわけで。そういう、アイロニー的なの好きな人にはタマランのでしょう。

★★★★☆☆☆☆☆☆

2009年2月21日

キャット・ピープル

Cat Peaple
1981年/アメリカ
監督:ポール・シュレイダー
出演:ナスターシャ・キンスキー マルコム・マクダウェル ジョン・ハード 
アネット・オトゥール フランキー・フェイソン ルビー・ディー

余計なカットが多いため無駄に尺が長くてイライラするし、ゆったりとアメリカ映画の底力を見せ付けるような、これ見よがしな構図が鼻につくわけで・・・

しかし、猫族の兄妹にマルコム・マクダウェルとナタキン。このキャスティングだけで全面的にこの映画を許そうという気になってしまう(笑) 中盤以降は、ヘアも惜しまぬナタキンの全裸カットがふんだんに拝める。(ついでに、アネット・オトゥールの豊かで白いパイオツも。)

動物園の係員が黒豹に腕を食いちぎられるというゴア・シーンでは、太い血管(動脈と静脈)が最後に千切れるという、細かい特殊メイクもなかなか頑張ってますね。

★★★★★☆☆☆☆☆

モンパルナスの灯

Les Amants de Montparnasse
1958年/フランス
監督:ジャック・ベッケル
出演:ジェラール・フィリップ アヌーク・エーメ リリー・パルマー リノ・ヴァンチュラ レア・パドヴァニ ジェラール・セティ

アヌーク・エーメの美しさはちょっと奇跡的だし、酒びたりで自堕落なモジリアニという役柄でも、内面から滲み出る気品を感じさせるジェラール・フィリップも素晴らしいのだが、なんといっても、画商モレルを演じるリノ・ヴァンチュラがいいです。この頃のフランス映画は、この俳優が居なかったら成立しなかったのでは?と思わせるまでの存在感。

モジリアニがカフェで絵を1枚5フランで売り歩く場面から、モレルがその死を看取り、馬車で絵の買い付けに急ぐまでの押し寄せるようなシークエンスが圧倒的。

★★★★★★★☆☆☆

ビリディアナ

Viridiana
1960年/スペイン
監督:ルイス・ブニュエル
出演:シルヴィア・ピナル フェルナンド・レイ フランシスコ・ラバル マルガリータ・ロサーノ

ブニュエルの中ではテーマ性が勝ちすぎていて、まぁ個人的な趣味もあるが、映画としての出来はあまり良くないと思う。なんとなく作りが雑でいい加減なところがあり、特に浮浪者を集めるくだり以降の散漫な演出。

ただ、シルヴィア・ピナルの美しさは素晴らしい。やはりブニュエルも女性を魅力的に撮ることができる演出家だ。

★★★★★☆☆☆☆☆

2009年2月19日

Dr.Tと女たち

Dr.T & The Women
2000年/アメリカ
監督:ロバート・アルトマン
出演:リチャード・ギア ヘレン・ハント ファラ・フォーセット ローラ・ダーン シェリー・ロング ケイト・ハドソン リヴ・タイラー

もう最初から最後までニヤニヤしっぱなし。こういうスラップスティックを撮らせたらアルトマンは本当に一流だ。

リチャード・ギアが活き活きしててとても良いのだが、なんといってもヘレン・ハントをはじめ女優陣が魅力的に描かれている。ゴダールや成瀬を例にあげるまでもなく、才能ある監督は女性を魅力的に撮るのがとても上手いよなぁ。

池のほとりでケイト・ハドソンとリヴ・タイラーがキスするシーンの美しさ。

★★★★★★★★☆☆

2009年2月14日

LOFT ロフト

2005年/ 「LOFT」製作委員会
監督:黒沢清
出演:中谷美紀 豊川悦司 西島秀俊 安達祐実 鈴木砂羽 大杉漣 加藤晴彦

う~ん・・・さすがにこれは擁護できんぞ黒沢清。あんまりストーリーの辻褄合わせには興味ないが、さすがに(いろんな意味で)破綻しすぎだ。

相変わらず幽霊の見せ方なんかはとても巧いのだけど、登場人物たちのキャラクタライズにもまったく興味がもてず、終盤は苦笑いするしかない。

このあとの『叫』は本作のセルフリメイクみたいなもんで、そっちのほうは成功してるんだけどね。

★★☆☆☆☆☆☆☆☆

普通じゃない

A Life Less Ordinary
1997年/アメリカ
監督:ダニー・ボイル
出演:ユアン・マクレガー キャメロン・ディアス ホリー・ハンター デルロイ・リンドー イアン・ホルム ダン・ヘダヤ

マクレガーもD・リンドーもホリー・ハンターもI・ホルムもみんな良いのだが、なんといってもキャメロン・ディアス! 山小屋で隣人が訪ねて来るシーンのキャメロンの大らかな色香と、カラオケ・バーでの2人のダンスシーン。これだけでメシ3杯は行けるな。

★★★★★★☆☆☆☆

2009年2月11日

2001年宇宙の旅

2001: A Space Odyssey
1968年/アメリカ=イギリス
監督:スタンリー・キューブリック
出演:キア・デュリア ゲイリー・ロックウッド ウィリアム・シルヴェスター ダニエル・リクター レナード・ロシター マーガレット・タイザック

CSのシネフィル・イマジカでキューブリック特集やってますね。で、何年ぶりかで見直してみた。

まあ公開から40年間、あらゆるところで語られ尽くしてるので、今さらどうこう言っても仕方ないんですが・・・ ひとことで言うと「ヘンな監督が撮ったヘンな映画」。

どうにも狂おしい珍品であることは確かだが、果たして世代を超えた歴史的名作という評価に結びつくものなのか。いや、悪い映画と言ってるわけじゃないんだけどね。光り輝くスターゲイトや宇宙船の造形、モノリスの異様さなんかも語るに絶好の符牒だから、映画ファンを牽き付けるのは当然でしょう。

この映画のキモは、最新鋭の完全無欠コンピュータHAL9000をめぐるサスペンスにあると思う。HALの故障を疑うボーマンとフランクがポッド(余談だが、ガンダムの連邦軍MS"ボール"はこのポッドを拝借したに違いない)の中で密談。HALが読唇術を駆使してそれを見破るシーンは素晴らしい。

ラストの白い部屋での一連の雰囲気は完全に怪奇映画だなw それが後の『シャイニング』に連なってくるわけか。

★★★★★★★☆☆☆

2009年2月10日

芝居道

1944年/東宝
監督:成瀬巳喜男
出演:古川緑波 長谷川一夫 山田五十鈴 進藤英太郎 阪東橘之助 
志村喬 清川荘司 花井蘭子 

成瀬らしいルックの統一だ。

中でもとても良いシーンがたくさんあるんだが、特に、江戸の芝居小屋で真打ちとして登場する、長谷川一夫(新蔵)の威風堂々ぶり。新蔵と大和屋が部屋で対峙する場面。前半→後半での大和屋の表情の落差がすごいw あと、山田五十鈴(お光)が大和屋に唄を披露するシーンの厳しさ。

そして、なんといっても省略の妙ですね。特に、お光が、大阪に戻ってきた新蔵の芝居を見るシーンの、破壊的とも言える省略。お絹に声をかけさせるだけで、じっさいにお光が芝居を見るくだりはバッサリの潔さ! 何を見せ、何を見せずにおくかを成瀬はよくわかっている。 (まぁ、予算的な制約がある部分もあろうけど)

それにしても古川緑波へのキャラ付けは見事というしかない。それに応える古川の厳しくて優しい台詞回しにも脱帽だ。

★★★★★★★★☆☆

2009年2月7日

パッション

Passion
1982年/スイス=フランス
監督:ジャン=リュック・ゴダール
出演:イザベル・ユペール ハンナ・シグラ ミシェル・ピコリ イエジー・ラジヴィオヴィッチ ミリアム・ルーセル ラズロ・サボ

観るのは4度目くらいかな。やっぱり良いです。『カルメンという名の女』や『リア王』には劣るけどね。

けっきょく、ダイアローグの辻褄合わせとか、物語をどう押し進めるかみたいなことに、ゴダールは基本的に興味がないんだと思う。 まぁ、ワケワカランと呟きながらも最後までハラハラしながら観てしまうのが80年代以降のゴダールの不可思議なところなんですがね。こればっかりはナゾです。とにかく、この音の使い方はゴダールでしか体験できない。

驚愕すべきは、冒頭の飛行機雲とミリアム・ルーセルの美しさ。ビデオに映るハンナ・シグラのクローズアップ!

★★★★★★★★☆☆

クラッシュ

Crash
2004年/アメリカ
監督:ポール・ハギス
出演:サンドラ・ブロック ブレンダン・フレイザー ドン・チードル マット・ディロン ウィリアム・フィクトナー ジェニファー・エスポジート ダンディ・ニュートン テレンス・ハワード ライアン・フィリップ クリス・"デュダクリス"・ブリッジス

これは映画に限らずTVドラマや小説でも同じなのだが、作品から教訓を得ようとしたり、テーマを読み取ろうとする見方は好きじゃない。なぜなら「作り手が何を伝えたかったか」なんぞ、本人に訊いてみないとわからないからだ。そんな傲慢なスタンスで映画を観ることなんてできない。

この『クラッシュ』は人種差別や銃問題がテーマであることは小学生が見たって明白だが、ミもフタもないことを言ってしまえばそんなことにはあまり興味がない。もっと言えば、優れた人間ドラマにも興味はない。映画でしか表現しようのない、「これが映画だよなぁ」と思わせてくれる場面や画に遭遇するために、ひたすら映画を観続けているのかもしれない。

しかし、大傑作『マグノリア』を彷彿とさせる群像劇である本作、じつに力のある映画で、「優れた人間ドラマ」だ。思い切って、近年のアメリカ映画を代表する大傑作と言い切ってしまおうじゃないか。久々に魂を揺さぶられた。

テレンス・ハワードのTVディレクターを若い警官が威嚇する場面、マット・ディロンがクラッシュして横転した車から女性を助け出す場面、鍵の修理工と銃を持ったペルシャ人の店主が対峙する場面・・・ 数え上げればキリがないが、みなぎる張り詰めた緊張感はシナリオだけではなくポール・ハギスの演出と役者の演技の賜物。また、この話を110分そこそこにまとめ上げられたのは、ハギスが優れた演出家である証拠だ。(フランク・ダラボンやある種の日本映画なら2時間半かかるだろう)

人間描写に深みがない? ご都合主義? そんなくだらんこと言ってるから、「最近のハリウッドはつまらない」などと、おかしな言いがかりを信じるハメになるんだよ! テレンス・ハワードの表情や佇まいを始め、画面をちゃんと凝視してるなら、そんなこと口が裂けても言えないはずなのに。

しかし、この映画がアカデミー賞だなんて信じられる? アメリカ人も捨てたもんじゃないな。

★★★★★★★★★☆

2009年2月6日

地に堕ちた愛

L'amour par Terre
1984年/フランス
監督:ジャック・リヴェット
出演:ジェラルディン・チャップリン ジェーン・バーキン アンドレ・デュソリエ ジャン=ピエール・カルフォン

リヴェットの映画は初見だが、はっきり言ってつまらない。出来が悪いくせに尺だけ長い昼ドラを見せられてる気分だ。

自然光のシーンはまだいいんだが、室内のライティングの加減が陰鬱で、観ててイライラしてくる。映画はほとんど邸宅内で進行するのでこれは致命的。喜劇王チャップリンの長女ジェラルディンは猿みたいで色気皆無だし、ジェーン・バーキンは色香はあるが、胸がない。

ラスト近く、ジェラルディンの言葉「よかったわね。茶番は終わりよ」。うん、ほんとによかったです。この茶番みたいな映画が終わって。

★★☆☆☆☆☆☆☆☆

2009年2月5日

ゴースト・ハウス

The Messengers
2007年/アメリカ=カナダ
監督:ダニー・パン オキサイド・パン
出演:クリスティン・ステュワート ディラン・マクダーモット ペネロープ・アン・ミラー ジョン・コーベット エヴァン・ターナー セオドア・ターナー

効果音やズーミングに頼ったこけおどしの恐怖演出は目につくも、臆面もなく幽霊を出しまくった前半~中盤はいいテンション。

しかし、観客がゴーストだけで本当に怖がるか不安になったのだろう、最後は人間のオッサンをむりやり悪役に仕立て上げ、物理的な力で家族を襲わせるという、最もやってはいけないパターンをやってしまった。

まぁ、天井を這い回る白い幽霊は良かったし(『エクソシスト3』のパクリですが)、いちおうホラーとしては及第点を上げられる出来だと思う。主役のクリスティンはアーシア・アルジェントを彷彿とさせるエキセントリックさで今後が楽しみな逸材と言っておこう。ちょっと暗すぎる気もするがね。

★★★★★☆☆☆☆☆

2009年2月4日

鬼軍曹ザック

The Steel Helmet
1950年/アメリカ
監督:サミュエル・フラー
出演:ジーン・エヴァンス ロバート・ハットン スティーヴ・ブロディ 
ジェームズ・エドワーズ リチャード・ルー シド・メルトン

戦争映画の完成形がここにある、と言っても過言じゃないでしょう。60年近くも前にこんな映画が出来上がっちゃってるんだから、以降戦争モノ(特にベトナム戦争)を撮る人はキツかっただろうなぁ。後の『最前線物語』のほうが評価は高いんだろうけど、俺はこっちのほうが好き。

それぞれのカットの余韻を削ぎ落とし、とてもゆったりとしたカットを数秒挿入する、という繰り返しでフラーの映画は作られていく。ああ、この絶妙なバランス感はこういうことなんだなぁ・・・。

かと思えば、様子を見に行った兵が爆死するシーンや、捕虜を近距離から撃って殺すシーンの唐突さに呆れかえり、仏像を俯瞰気味に捉えたカット、ザックが韓国人の子供のお守りに”ショートラウンド”と書くシーンの情緒溢れる演出にしんみりする。低予算のため、砲撃の場面ではニュース映像や他の映画のシーンを流用するわけだが、それを恥じるでもなくあざとくやってのける。

こう書いてしまうといかにも乱暴な作りのようだが、それがぜんぜんそうじゃないのだ。一度観てみればわかる。凄いんだから。面白いんだから。

★★★★★★★★★☆

2009年2月3日

ニューヨーカーの青い鳥

Beyond Therapy
1986年/アメリカ
監督:ロバート・アルトマン
出演:ジュリー・ハガティ ジェフ・ゴールドブラム グレンダ・ジャクソン 
トム・コンティ クリストファー・ゲスト ジュヌヴィエーヴ・パージュ

『ショート・カッツ』や『プレタポルテ』に連なる、アルトマン流の群像劇。

あまりにも科白に頼りすぎているし、全体の舞台調な作りは、「アルトマンだから」といって手放しで擁護するには値しない。

あえてかっこいい言葉を使えば、"洗練されていない"と思う。前記2作品はもちろん、初期の『イメ-ジズ』や『ナッシュビル』よりも遥かに下品だと言わざるをえない。

良い場面もたくさんあるけど、これはさすがに観客を馬鹿にしすぎでしょう。

★★★☆☆☆☆☆☆☆

2009年2月1日

悪魔のいけにえ

The Texas Chainsaw Massacre
1974年/アメリカ
監督:トビー・フーパー
出演:マリリン・バーンズ ガンナー・ハンセン エド・ニール 
アレン・ダンジガー ポール・A・バーテイン ウィリアム・ヴェイル

廉価版DVDが発売されたので購入、何度目かの観賞です。

HDリマスターのため映像がキレイすぎるのが玉に瑕ではあるが、(VHSのザラザラした感じのほうが雰囲気あるのよね・・・)いやぁしかし、すごい映画だわやっぱり。たった82分の尺なのに観たあとぐったり疲れる(笑)

当時のスタッフの心意気や現場の空気とか天候、キャストの演技など、いろんなものが奇跡的に合わさって、いわば僥倖のような形で撮れてしまった映画なんだろうなぁ。フーパーの後のフィルモグラフィーを観ても、この『悪魔のいけにえ』だけが明らかに異質だもん。

頭をハンマーで殴られて足をバタバタ痙攣させる様が怖い。人間や動物の白骨が散乱する部屋が怖い。白煙を吹き上げながら唸りをあげるチェーンソーの轟音が怖い。生物学的には人間だが「怪物」にしか見えない人食い一家が怖い。マリリン・バーンズの叫び声と眼球が怖い。

そしてなにより、何度観てもとても面白い映画なんだよなぁ。韻を踏むようにリズム感のある原題(声に出して読んでみてほしい)に始まり、オープニングのフラッシュの連続と墓地でのミイラの対比、ワゴンに怪しげなヒッチハイカーを乗せるくだりで始まる序盤で恐怖のテンションを高めることに成功してるし、特筆すべきは、女が家の中に足を踏み入れるシーンのカット割りと超ローアングル。ここも一見すると即興演出のようでいながら、実は巧妙に考え抜かれたものだろうと思う。

★★★★★★★★★★

黄色いリボン

She Wore a Yellow Ribbon
1949年/アメリカ
監督:ジョン・フォード
出演:ジョン・ウェイン ジョーン・ドルー ジョン・エイガー 
ベン・ジョンソン ハリー・ケリー・Jr ヴィクター・マクラグレン

冒頭の騎兵隊が荒野を駆け抜けるシーンの迫力でつかみはOK。横へ横への移動がウェスタンの真骨頂だと思うが、ジョン・フォードらしい生真面目さと忠実さがここでも際立つ。打ち合いの場面はあるのだが流血や人が倒れるわけではなく、ヒューマニズムを前面に押し出す手法は、これもフォードらしい。

何よりテクニカラーの色合いを愉しもうじゃないか。青い空と赤茶けた荒野、そこを疾走する騎兵隊の群れ!

西部劇自体があまり好きではないので点数は辛めだが、名作の名に恥じない出来だと思うぞ。

★★★★★★☆☆☆☆