2009年4月30日

ファンタスティック・プラネット

La Planete Sauvage
1973年/フランス=チェコ
監督:ルネ・ラルー ローラン・トポール


なんともまぁ、鮮烈で悪夢のようなヴィジュアル・センス。 よくぞこんなことを思いつくなぁと感心する。 特に、異星生物たちのイメージのグロテスクなこと! この映像世界に浸るだけでも観る価値がじゅうぶんにあると思う。

ガキの頃に見てたら悪夢にうなされそうだw

★★★★★★★☆☆☆

2009年4月29日

音楽

1972年/ATG
監督:増村保造
出演:黒沢のり子 細川俊之 高橋長英 森次浩司 三谷昇


ヒロイン黒沢のり子の不感症は兄との近親相姦願望が原因であると、細川俊之演じる胡散臭さ満点の精神科医がもっともらしい講釈を垂れつつ説き伏せるという、なんともまぁ、ATGらしい映画。

でっかいハサミを女の足に見立てるオープニングのイメージとか、黒沢が見る悪夢のイメージなんかはとても面白いのだが。

★★★★☆☆☆☆☆☆

ブロンコ・ビリー

Bronco Billy
1980年/アメリカ
監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド ソンドラ・ロック ジェフリー・ルイス 
スキャットマン・クローザース ビル・マッキーニー サム・ボトムズ

実に大人な映画だ。

とにかくイーストウッド監督主演ってだけで面白さは保証されたようなものだが、時代遅れのカウボーイ野郎をイーストウッドがしんみりと演じる。運転中に気に障ること言われるとクラクションを派手に鳴らしてキレたり、悪徳保安官にコケにされて悔し涙を流す。粗暴なとこはあるものの、仲間たちを見守る実に優しい眼差しが素晴らしいではないか。

列車強盗のシークエンスでは笑えると同時に、実に巧妙に考え抜かれたカッティングを見せる。

★★★★★★☆☆☆☆

2009年4月25日

吸血処女イレーナ・鮮血のエクスタシー

Les Avaleuses
1973年/スペイン=フランス
監督:ジェス・フランコ

出演:リナ・ローメイ アリス・アルノ ジャック・テイラー ジェス・フランコ


男女問わず股間から精気(血液)を吸い取る女吸血鬼イレーナの物語。映画は最初から最後までほとんどセックス(設定は吸血)シーンか自慰シーンで、これは完全にポルノ映画だ。しかも割とハードコアw なにせ、フェラチオシーン(もちろん日本版ではモザイク処理)まで登場する。

映画作家としての野心が見え隠れするかというと全くそんなことはなく、同じフィルムを何度も使い回し、メロウな音楽も全編ずっと同じ。ストーリーの語りはモノローグで済ませるという適当さ。意味のないズームアップ、ソフトフォーカスの多用は、見てて不快ですらある。

星1つのデキだが、リナ・ローメイのエロさに免じて2つにしました。

★★☆☆☆☆☆☆☆☆

上海から来た女

The Lady from Shanghai
1947年/アメリカ
監督:オーソン・ウェルズ
出演:オーソン・ウェルズ リタ・ヘイワース エヴェレット・スローン 
テッド・デ・コルシア グレン・アンダース

破壊的とも言えるストーリーの進め方。ここまで端折って大丈夫か?と余計な心配すらしてしまうが、殺人事件のくだりからはいっそう判りにくくなっている。聞くと、制作会社の指示で1時間くらいカットされたらしい。道理で。

でも、そんなこと関係なく楽しめてしまう。なんといっても、登場人物たちのキャラクタライズが完璧だ。この頃が美貌のピークと思われるリタ・ヘイワースの素晴らしさはもちろんだが、だらだら汗を掻きながら捲くし立てるグリスビーと、足の不自由な弁護士バクスターの描き方がとても丁寧。

有名なラスト、遊園地のミラールームのシーンはやっぱりすごい。これはいったいどうやって撮影したのか。

★★★★★★★☆☆☆

光る女

1987年/東宝
監督:相米慎二
出演:武藤敬二 安田成美 秋吉満ちる すまけい 出門英


無駄に豪華絢爛なセットや大エキストラ、長廻しやロングショットはもう相米の個性と割り切って観れるのだが、この映画は意外性が無いというかなんというか、つまり、ざっくり言えば面白くない。

まぁ、日本でこんな映画を撮る人は他にいないのだからいいじゃないか。・・・という形でしか擁護できんなこれ。

★★★☆☆☆☆☆☆☆

トウキョウソナタ

2008年/日本=オランダ=香港
監督:黒沢清
出演:香川照之 小泉今日子 小柳友 井之脇海 井川遥 
役所広司 津田寛治 児島一哉

アマゾンで予約してて今日届きました。恵比寿ガーデンシネマで2度見たのに、もう3度目の観賞。

黒沢清らしい、ピンと張り詰めた緊張感みなぎる画面作り。もうたまらんっす。特典ブックレットの香川照之(この人も大した役者です)がインタビューで、「どのカットにもホラーが潜んでいる」と、黒沢に最大限の賛辞を送っている。黒須の無理心中を知らず、自宅を訪れる佐々木。カーテン越しに黒須夫妻の亡霊が見える・・・ような気がしたのは、俺だけじゃあるまい。

ストーリーが現実らしさに収斂されることを嫌う黒沢清にとっては、劇作中で唐突に訪れる「できごと」は、あくまで副次的要素でしかないのだ。だから、少しずつではあるが、故意に「現実っぽさ」からズラしている。劇的な物語などどこにもないが、画面そのものが劇的であるというのは、ある種の尊大で稀有な映画作家だけに許された、特権階級なのだ。

次男の入学試験におけるピアノ演奏の場面。映画を見てる我々に対してさえ、背筋をピンと伸ばして画面に見入ることを強制する、驚愕すべきシーンだ。これはまぎれもなく演出家のウデだろう。ラストシーンはもちろん、ハローワークの行列や、炊き出しへの人の群がり方はアンゲロプロスの映画にそっくり。
それにしてもキョンキョンもすっかりオバサンだなぁ。

★★★★★★★★★☆

2009年4月23日

愉しき哉人生

1944年/東宝
監督:成瀬巳喜男
出演:柳家金語桜 山根寿子 中村メイコ 横山エンタツ 花岡菊子


戦時中に作られたからプロパガンダ映画になるのは仕方ないとしても、成瀬の演出とかそういうものが入り込む隙が一切ないほどのアジ映画。正直、見てて不快になる相馬一家の行動と、それに追従して洗脳される住民たち。娘のめぐみ(中村メイコ)の表情や、嫁(山根寿子)が桶の音に合わせて狂い歌うシーンには寒気すら覚える。

★★☆☆☆☆☆☆☆☆

2009年4月22日

街のあかり

Laitakaupungin Valot
2006年/フィンランド=ドイツ=フランス
監督:アキ・カウリスマキ
出演:ヤンネ・フーティアイネン マリア・ヤンヴェンヘルミ マリア・ヘイスカネン 
イルッカ・コイヴラ カティ・オウティネン

カウリスマキはあんまり好きじゃないなぁ。『コントラクト・キラー』以来、観たのは2作目だが、これでは俺に訴求しない。

映画全体の厳しさと陰惨さ、最小限のセリフ、役者たちの表情の無さ、ドアの開閉のアクションなどは、もう全てブレッソンの影響が明らかだけども、まぁその先駆者がいるしね・・・。小津にも似てるけど、だったら小津のほうがずっといいだろうって話で。

「負け犬三部作」だかなんだか知らんけど、わざわざスクリーンで負け犬の人生に浸りたくはないぞw

★★★☆☆☆☆☆☆☆

2009年4月20日

女体渦巻島

1960年/新東宝
監督:石井輝男
出演:吉田輝雄 三原葉子 万里昌代 天地茂 星輝美


新東宝末期のキワモノアクション。陳腐なストーリーと、主役吉田輝雄の素人くさいセリフ回し、突っ込みどころ満載の展開だが、う~ん・・・面白い。なんでだろ。

それはやっぱり、映画全体がとてもスピーディなのが大きいと思う。余計なカットをすべて剥ぎ取り77分というコンパクトさ。渡辺宙明のジャズっぽい音楽も映画のノリに寄与している。

デカパイの三原葉子がすばらしくカワイイのだが、彼女がバーでチンピラの下っ端と「悪魔のキーッス」を踊る場面の、見事なチープさ(笑) ラストで岩の上からライフルぶっ放すんだが、登場しても一瞬誰だかわかんないのは、石井輝男演出の妙。

タランティーノの『パルプ・フィクション』や『デス・プルーフ』は、新東宝のこのへんの映画に影響受けてるのが明白ですね。まぁ彼の映画オタクっぷりは今さら触れるまでもないんだけど。

★★★★★★☆☆☆☆

2009年4月19日

影なき声

1958年/日活
監督:鈴木清順
出演:二谷英明 南田洋子 宍戸錠 金子信雄 芦田伸介 初井言栄 
野呂圭介 高橋駿雄 植村謙二郎

いきなりのシネスコ主張にびっくりするが、果たしてシネスコで撮る意味があったのかなぁ。麻雀のシーンは確かに画面の収まりはイイんだけどね(笑

清順らしく、物語の進め方がとても乱暴(褒め言葉です)。この人の画面の繋ぎはオーソン・ウェルズに通ずるものがある。小平の田園で浜崎の死体が発見されるシーンのカッティングや、新聞社、田端駅のライティングなんかも清順らしさが出ている。

恐喝屋・浜崎役の宍戸錠のキャラクタライゼーションが絶妙で、前半ですぐ殺されてしまうのが残念。

★★★★★☆☆☆☆☆

ブラッド・ワーク

Blood Work
2002年/アメリカ
監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド ジェフ・ダニエルズ ワンダ・デ・ヘスース 
アンジェリカ・ヒューストン ティナ・リフォード

冒頭で犯人を追って走りまくる72歳のイーストウッド! 一部はスタントマン使ってるんだろうけど、いやぁ若い若い。演出も若い若い。心臓移植を受けて今はヨットで暮らす元ヤリ手のFBI捜査官っつー役柄設定をイーストウッドが演じるってだけでおじさんは嬉しくなるのだ。

どうってことないクライム・サスペンスで、謎解きや犯人探しはあっさりしたもんなんだけど、ちゃんとした人が撮ると面白くなるという典型でしょう。

取調室でドーナツを食うイーストウッドと2人の刑事、この間が絶妙w 主治医役のアンジェリカ・ヒューストンの顔が怖い・・・。

★★★★★★★☆☆☆

2009年4月18日

華氏451

Fahrenheit 451
1966年/イギリス=フランス
監督:フランソワ・トリュフォー
出演:オスカー・ウェルナー ジュリー・クリスティ シリル・キューザック 
アントン・ディフリング ジェレミー・スペンサー

画面作りなんかはトリュフォーらしさがぜんぜん無い。原色の赤を強調したカラーは、ニコラス・ローグが強く出てる印象だ。消防車(?)が道路を滑走するシーンのスピード感にワクワクするし、壁掛けのプラズマテレビを主婦4人が囲んでくだらないお喋りをする場面も何とも言えず良い。凝ったカメラワークには様式美すら感じさせる。

ただ、個人的にはあまり好きな映画ではない。尺が長いのが最大の欠点だと思う。イギリス映画って基本的に長いんだよね。

★★★★★☆☆☆☆☆

そして人生はつづく

Zendegi Edame Darad
1992年/イラン
監督:アッバス・キアロスタミ
出演:アッバス・キアロスタミ ファルハッド・ケラドマンド プーヤ・バイヴァール


ドキュメンタリーに見せかけてはいるが、劇映画でしか有り得ない位置にカメラがあったり、本当にこの監督はあざとい。地震のショックに打ちひしがれた人々に「地震のこと話してくれ」ってあんた映画のためとはいえ残酷だよ・・・

トンネルに入り車中が暗くなる中でのオープニング・クレジットから、ラスト、ルノーが急坂をアクセル全開で駆け上がるロングショットの長廻しワンカットまで、何とも言えずいい味わい。

けっきょく『友だちのうちはどこ?』の主演子役には出会えなかったのかな。

★★★★★★★☆☆☆

2009年4月17日

不思議惑星キン・ザ・ザ

Kin-Dza-Dza!
1986年/ソ連
監督:ゲオルギー・ダネリア
出演:スタニスラフ・リュブシン エフゲニー・レオーノフ


つまらん。空飛ぶヘンな乗り物や地下都市の美術はがんばっているけどね。画面作りも普通だし、いろんな意味でカルトっぽくなくて逆に萎える。

しかし、ひたすらロングショットばかりの前半と、後半は、違う人物が演出してたんじゃないのこれ? まぁどうでもいいですが。

ク~~

★★☆☆☆☆☆☆☆☆

2009年4月16日

白昼の暴行魔

La Settima Donna
1977年/イタリア
監督:フランコ・プロスペリ
出演:レイモンド・ラヴロック フロリンダ・ボルカン シェリー・ブキャナン 
フラヴィオ・アンドレーニ ステファノ・セドラーティ

3人の銀行強盗が車の故障でふらりと立ち寄った海辺の別荘で、尼さんと神学校の女生徒たちを相手に陵辱の限りを尽くす悪趣味映画。

久々にクズ映画に出会えた(汗) 意味のないローアングル(小津の真似とも思えないが)が多かったり、同じカットの中で露出や色合いが変わるのは作り手の趣味なんだろうからまぁいいとしても、レイプシーンの安易なスローモーションや、品のないズームアップ、尼僧コスプレパーティの音楽での盛り上げ方なんかは、完全に学生自主映画のノリで、ちょっと正視に耐えない出来。

なんでこんなゴミ映画がDVD化されてるんだろう・・・?

★☆☆☆☆☆☆☆☆☆

2009年4月15日

友だちのうちはどこ?

Khane-ye Doust Kodjast?
1987年/イラン
監督:アッバス・キアロスタミ
出演:ババク・アフマッドプール アハマッド・アハマッドプール イラン・オタリ 
ゴバダクシュ・デファイエ

キアロスタミの演出が凄いのはわかるんだけど、どうもこの人の映画は暗くていかん。子供が主役の作品では、『トラベラー』のほうが妙な開放感があった。この暗さは、登場する子供たちが押しなべて表情が無いことにも起因するのか。とにかく教師も親も「勉強しろ宿題しろ」の大合唱だもんなぁ。あれじゃあ、勉強が嫌いになるよ。現在の日本でイスラム圏の映画に接する機会は(俺の知るかぎり)キアロスタミくらいしか無いので、これが普通なのかどうか、よくわからない。

なんか映画そのものからは脱線したコメントになってしまった・・・

★★★★☆☆☆☆☆☆

2009年4月13日

時の支配者

Les Maitres du Temps
1982年/フランス
監督:ルネ・ラルー

80分というコンパクトさの中で、ストーリーの語りがうまい。俺は頭が悪いせいか、ラストのタイムパラドックス的なオチがいまいちよくわからんのだけどw

シルバードの家での夕暮れの逆行の場面。この陰影のカリカチュアにはびっくりした。大きなハスからハスの妖精がどわーっと出るシーンも出色。キン肉マンの超人ペンタゴンみたいなのがどわーっと居たり、人間の脳を喰らう巨大スズメバチがどわーっと襲い掛かってきたり、ああいうのはCG使わない限り、アニメ映画でしか出来ないよなぁ。

全体に、ファミコンみたいな効果音がいい味出してる。

★★★★★★☆☆☆☆

2009年4月12日

鶴八鶴次郎

1938年/東宝
監督:成瀬巳喜男
出演:長谷川一夫 山田五十鈴 藤原釜足 大川平八郎 三島雅夫


成瀬の芸道もの。『芝居道』なんかと同じ系譜だが、芸人2人のやりとりが実にコミカルだ。成瀬には珍しく、オーヴァーラップの回想シーンがある。

もう70年も前の映画だが、カットのひとつひとつにまったく無駄がなく、長谷川一夫と山田五十鈴の佇まいも素晴らしいのひとこと。別に俺は懐古主義ってわけではないけども、最近の映画人はこういうの観て勉強したほうがいいよな。

ラストのオチ(?)は読めたけどね。でもあの居酒屋で長谷川が藤原釜足から「呑め呑め」と勧められ、大きめのコップで熱燗を呑むシーンはとてもいい。

★★★★★★★★☆☆

荒野の用心棒

Per un Pugno di Dollari
1964年/イタリア
監督:セルジオ・レオーネ
出演:クリント・イーストウッド ジャン・マリア・ヴォロンテ マリアンネ・コッホ 
ヨゼフ・エッガー マルガリータ・ロサーノ

赤いアニメスチールのオープニングクレジットや、エンニオ・モリコーネの音楽の使い方等が秀逸。イーストウッドのかっこよさは今さら言うまでもない。

終始、画面作りや雰囲気が陰惨。陰惨なのはぜんぜんOKなのだが、中盤以降、ひたすら画面が暗くて何が起こっているのかよくわからないのが・・・

黒澤明の『用心棒』より面白い映画だと個人的には思う。が、むかし「日曜洋画劇場」で見た、山田康雄の日本語吹き替え版の方が好きだったりするw

★★★★★★☆☆☆☆

2009年4月11日

透明人間

Memoirs of an Invisible Man
1992年/アメリカ
監督:ジョン・カーペンター
出演:チェヴィー・チェイス ダリル・ハンナ サム・ニール マイケル・マッキーン 
スティーヴン・トボロウスキー ジム・ノートン

透明人間がタクシー乗るために酔っ払いで腹話術(?)をしたり、サム・ニールが羽交い絞めにされて斜めに歩いたり、包帯をグルグルと取るシーンなど、やはりカーペンターは映画でしかできないことをやろうとしている。

サスペンスのキモは押さえてるし、本作もたくさんいいところがあるのだけど、透明人間モノとしては陰惨なヴァーホーヴェンの『インビジブル』の方が好きだ。

★★★★★☆☆☆☆☆

ゾンゲリア

Dead and Buried
1981年/アメリカ
監督:ゲイリー・A・シャーマン
出演:ジェームズ・ファレンティーノ メロディ・アンダーソン リサ・ブロント 
ジャック・アルバートソン デニス・レッドフィールド ロバート・イングランド

全編スモークが炊かれたような映像になってて、作者の意欲が窺える。スタイリッシュな演出と、役者(特にリサ・ブロントとメロディ・アンダーソン)の描き方がなかなか上手いと思う。アメリカのB級ホラーにはこういう良作がチラホラあるから気が抜けない。ストーリーの語りは異様な画面の連続で何がなんだかよくわからないのだがw

目玉に注射針を突き刺したり、鼻の穴から硫酸を流し込んだりと、グロ描写もきっちり押さえているね。

それにしても、(本作では脚本の)ダン・オバノンが参加した映画は良作が多い。『ダーク・スター』『エイリアン』『スペースバンパイア』『トータル・リコール』『バタリアン』『スクリーマーズ』などなど。

★★★★★★★☆☆☆


間違えられた男

The Wrong Man
1956年/アメリカ
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:ヘンリー・フォンダ ヴェラ・マイルズ


ヴェラ・マイルズが狂い出す瞬間の笑いが怖い・・・ 彼女がベットに横たわる登場シーンと、精神病院の窓辺にぼんやりと佇むラストの、あまりの違いに驚く。まるで別の女優が演じているようだ!

ヘンリー・フォンダも、犯人に間違えられる気の弱そうな男を好演。真犯人が判明し、証人の女たちやその真犯人と対峙する場面ではもうちょっと怒ってもいいじゃないか、なんて思ったり。

ヒッチコックにしては演出や語り口が単調で、中盤でちょっとダレるかな。個人的な好き嫌いもあるんだけどね。

★★★★★☆☆☆☆☆

2009年4月10日

少女ムシェット

Mouchette
1967年/フランス
監督:ロベール・ブレッソン
出演:ナディーヌ・ノルティエ マリア・カルディナール ポール・エベール


これはできの悪いブレッソン。シーンの繋ぎがラフな感じで、場面場面の呼応性がいまいち判りにくい。狩りの場面など、どうも観客に暗喩を強いるような演出も鼻につく。まぁ正確に言えば教訓的なシーンはブレッソンには多いんだけど、他の作品ではこれ見よがしじゃないのに、この『少女ムシェット』ではどうも「さぁ見なさい」的な押し付けがましさがある。

バンピング・カーのシーン、ムシェットの開放感あふれる笑顔が眩しい。

★★★★☆☆☆☆☆☆

2009年4月8日

トゥインクル・トゥインクル・キラー・カーン

The Ninth Configuration
1980年/アメリカ
監督:ウィリアム・ピーター・ブラッティ
出演:ステイシー・キーチ スコット・ウィルソン エド・フランダース 
ジェイソン・ミラー ネヴィル・ブランド モーゼス・ガン ロバート・ロッジア ジョー・スピネル

精神科医の名前はケーンなのになんでカーンなんだろ? とっくに廃盤になってるVHSのは『トゥインクル・トゥインクル・キラー・ケイン』だったと記憶しているが・・・。

まぁいいや。しかしなぁ、このキャストは反則でしょ。

フライシャーの『センチュリアン』で共演したステイシー・キーチとスコット・ウィルソン。『エクソシスト』でカラス神父を演じたジェイソン・ミラー、『死霊伝説』『エクソシスト3』のエド・フランダース! 『悪魔の沼』のネヴィル・ブランドや、ロバート・ロッジア、さらにはジョー・スピネル(『マニアック』!!)まで顔を出す。

70年代魂炸裂というか何というかw

自害したケーンを、カットショウが抱きかかえて階段を下りてくる場面から、車の中でカットショウが歓喜の表情を浮かべるラストのストップモーション。ここの一連のシークエンスには、見るたびに泣かされてしまう。傑作。

★★★★★★★★☆☆

2009年4月5日

センチメンタル・アドベンチャー

Honkytonk Man
1982年/アメリカ
監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド カイル・イーストウッド ジョン・マッキンタイア 
ヴァーナ・ブルーム マット・クラーク

イーストウッドの傑作ロードムーヴィー。

肺病なのにタバコと酒を手放さない流しの歌手をイーストウッドが演じる。そして甥っ子ホス役には彼の長男カイル! こいつがまた大人なんだよ。役では16歳設定だけど、実際は当時13歳。車の運転するし、病気のクリントのお目付け役みたいな役回り。バス停でのおじいさんとの別れのシーンにはグッと来るなぁ。バスが出て、カイルがちょっとだけ駆け足する。あの"間"がいい。

カイルと女の子が2人並んで道を歩くシーンに、イーストウッドの歌う「Honkytonk Man」が被さるラストには泣かされた。冒頭の砂塵が吹き荒れるシーンは『怒りの葡萄』へのオマージュか。

★★★★★★★★☆☆

2009年4月4日

ドーン・オブ・ザ・デッド

Dawn of the Dead
2004年/アメリカ
監督:ザック・スナイダー
出演:サラ・ポーリー ヴィング・レイムス ジェイク・ウェバー メキー・ファイファー 
タイ・バーレル マイケル・ケリー ケヴィン・ゼガーズ リンディ・ブース

いいじゃんこれ。なかなかいい。確かにロメロのオリジナル版へのリスペクトが足りない感はあるけど、捨てたもんじゃないです。ゾンビが死んでから復活までがやたら早いことと、ゾンビが走るってのが最初はどうも受け付けなかったが、これはもういわゆる"ゾンビ"ではなく正に"リビングデッド"ってことで消化し、別の映画として観たほうがいいでしょうね。

ひたすらカットを割る最近のアメリカ映画にありがちな編集はここでも健在で辟易するんだが、活劇やサスペンスのノリも悪くないし、エンドロールにクロスカッティングさせた『サンゲリア』風のラストも気が利いている。

★★★★★★☆☆☆☆

2009年4月2日

杏っ子

1958年/東宝
監督:成瀬巳喜男
出演:香川京子 山村聰 木村功 夏川静江 太刀川洋一 三井美奈 
中北千枝子 小林桂樹 加東大介

やっぱり香川京子は大した女優だ。

例えば木村功が酒を飲みながら原稿を書き、挙句の果てには香川京子にグダグダ絡むという、幾度となく繰り返される場面において、劇中の最初から最後まで、一貫として凛とした表情を崩さない。夫への眼差しは優しくも厳しいが、そうかと思えば、にっこりと微笑んだり、時折挟まれる香川の顔に照明が過度に当たる場面の、ドキリとする色気。

雨あがりの下り坂を香川がゆっくりと下りていくラストショットが美しい。

★★★★★★★☆☆☆

2009年4月1日

ショーン・オブ・ザ・デッド

Shaun of the Dead
2004年/イギリス
監督:エドガー・ライト

出演:サイモン・ペッグ ケイト・アシュフィールド ニック・フロスト ディラン・モーラン ルーシー・デイヴィス ペネロープ・ウィルトン

オープニングとエンドロールの音楽は本家『ゾンビ』から拝借。リビングデッド映画のアクション要素はしっかり押さえてはいるものの、とにかく登場人物がアホばっかりで、これじゃ成立しないだろうっての。ガンガン挿入されるギャグも俺の中ではすべて空回り。まぁ最近のイギリス映画らしいっちゃらしいけど・・・

そういえばロメロの『ランド・オブ・ザ・デッド』DVD特典で、監督のライトと主演のサイモン・ペッグがゾンビ役で特別出演させてもらった、みたいなエピソードが掲載されてた。まぁどうでもいいけど。

★★★☆☆☆☆☆☆☆