2009年5月9日

マリアの胃袋

1990年/ディレクターズ・カンパニー
監督:平山秀幸
出演:相楽晴子 柄本明 大竹まこと 余貴美子 范文雀


柄本明が演じる幽霊がかなりきわどい。普通に歩くし、女の死体を担いで運び、車を運転する。かつて映画でこんな死者像があっただろうか。ラストで手を叩く柄本明を俯瞰でヘリからとらえた映像の、なんとも微妙な恐ろしさ。

そんなわけで、この『マリアの胃袋』は堂々たる怪奇映画である。地下室、カーテンの向こう側に鎮座するマリアの恐ろしさったらない。前半はロングショットでちらちら顔が見えるだけなのだが、ピアノの上に乗せたぶよぶよに肥大した両手と併せ、これが怖い。

ラスト、そしていよいよマリアの顔と身体が全貌を現すわけだが、これがやっぱりとても怖い。言っておくが、マリアが大竹まことの内臓をぐちゃぐちゃと食べるシーンがグロテスクだから怖いのではない。マリアという怪物が怖いという、構造的な必然性を映画全体が獲得しているから怖いのだ。ホラーとは、雰囲気でもストーリーでもなく、理論なのである。平山秀幸は劇場用処女作でそのことを証明して見せた。天晴れである。

★★★★★★★☆☆☆

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